研究課題/領域番号 |
11J09633
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花崎 浩太 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 非断熱動力学 / フロケー仮説法 / レーザー場 |
研究概要 |
1.レーザー場中の電子の非断熱動力学を解析する新たな理論の構築と計算手法の開発 本研究は、強いレーザー場の下の分子の電子状態の動力学を第一原理的に解明し、反応制御などに応用することを目的とする。この目的に対し、一年目の本年度は、理論の構築と計算手法の開発に注力した。既存の(非断熱)分子動力学の手法は、レーザー下の分子の振る舞いの定性的理解に繋がりにくい欠点をもつ。研究員は、現在まで多くの知見を与えてきた、量子化学、特に(レーザー無しの)非断熱動力学との類推が可能な理論を作ることを試み、フロケー仮説法を応用した理論、及び計算手法の開発を行った。これは、(1)フロケー仮説法により、レーザー場中の電子状態を外場により"変調された"電子状態として特徴づけ、(2)核の運動やレーザーパラメータの変化によるそれら状態間の非断熱遷移を明示的に扱う方法である。ここで(1)は(単純な原子、分子に関し)過去にも多くの研究例があるが、(2)を明示的に扱った例がなく、直観的な近似に留まっていた。研究員は非断熱動力学の理論を応用することで(2)を補い、時間依存するレーザー場の効果をも正確に扱える理論的基礎を構築した。次に、この理論的基礎に沿って、数値計算手法を開発した。これは、GAMESSという量子化学計算のパッケージ及び、研究員が昨年度までその上に構築してきた非断熱動力学の計算プログラムを発展させたものであるが、フロケー状態の計算を含むため、大幅な拡張を必要とした。現在、50kstep程度の拡張プログラムの作成を終え、先行研究の結果の再現による検証の段階にある。検証が完了した段階で、基礎理論を含めて学会誌に報告する計画で、現在作業を進めている。 2.非断熱動力学のレビューへの参画 上記の研究活動に加え、本年度は、受入研究者である高塚和夫教授の非断熱動力学についてのレビューの執筆に協力し、second authorとして、レビューの執筆に携わり、非断熱動力学の議論を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規の手法の開発の為、2年目中盤まで開発/検証に充てる計画であり、概ね予定通りである。但し、本年度中に目に見える結果が出せず、学会発表や論文による成果報告ができなかったのは遺憾とするところである。一方、レビューの執筆については、計画外の成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発したプログラムの検証作業を進め、新しい手法として学会誌に発表する。また、幾つかの比較的単純な分子に適用し、得られた新たな知見を発表する。 フロケー仮説法に沿った理論展開によって得られる分子の振る舞いの予測に関し、数値計算的に検証して発表する。
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