研究課題/領域番号 |
11J09656
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
窪田 恵一 長岡技術科学大学, 大学院・エネルギー・環境工学専攻, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 微生物燃料電池 / Microbial Fuel Cell / 一槽型 / 嫌気性処理 / エアカソード / 排水処理 |
研究概要 |
有機性廃水から電気としてエネルギーを回収できる微生物燃料電池の廃水処理に関する技術開発を目的として、主に二項目について研究を行った。以下にそれぞれの結果を示す。 1.連続排水処理装置の開発 実廃水処理に適した微生物燃料電池技術を確立するためにUASB型の装置を作成し、装置内に発電微生物を包括した粒状ゲル(グラニュールアノード)を充填し、酢酸ナトリウムを主有機物成分とする人工廃水の連続処理試験を行った。結果、最大でクーロン効率13%、COD除去率30%程度であり、十分な性能を発揮しているとは言い難かった。十分な性能が得られ無かった原因として、グラニュールアノードの粒径が大きかった為に微生物と有機物の親和性が不十分で有機物除去性能が低下したこと、ゲルの伝導率が不足し、電極への電子の受け渡しがうまく機能していないことなどが考えられた。 2.回分試験による発電に寄与している微生物の同定と有機物からの発電特性の把握 酢酸以外のVFA成分であるプロピオン酸や酪酸を含む廃水からの発電性能やそれらの有機物分解特性を把握するために、一槽型微生物燃料電池装置を複数作成し回分試験を行った。また比較対象として酢酸を主成分とする廃水でも同様の装置で回分試験を行った。これまでプロピオン酸や酪酸などは微生物燃料電池では分解や発電が難しいとされてきたが、本研究においては酢酸と同レベルの処理性能、発電性能を発揮することが可能であった。PCR-DGGE法による解析では、プロピオン酸や酪酸を処理した装置の菌相は酢酸のみを処理した系とほぼ同一であり、同種の菌が分解及び発電に寄与していると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
排水処理装置に関しては現段階において目標とした性能を発揮するまでには至らなかったが、いくつかの改善点を見出すことが可能であった。一方プロピオン酸や酪酸等といった中間代謝脂肪酸に対して、有機物分解特性や発電特性の把握を行い期待以上の成果が得られ、微生物燃料電池による有機物分解に関する知見の収集ができた。これらを総合して本研究は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今回作成したUASB型微生物燃料電池排水処理装置に関して、より性能向上を図るためにカーボングラニュールの改良を行う。具体的には基質と微生物との親和性向上のため粒径をより小さくすることや、ニュートラルレッド等のメディエーターの添加などによる伝導性の向上を図る。加えて保持微生物量の増加や運転条件の最適化を図ることで処理性能の向上を行う。微生物燃料電池による排水処理システムの構築のため、発電メカニズムや発電に関わる微生物群の同定も進めていく。具体的には、今回実験を行ったVFAよりもより高級な脂肪酸(パルチミン酸等)についても回分試験による有機物分解特性や発電特性の把握を行う。
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