有機性廃水から電気としてエネルギーを回収できる微生物燃料電池の廃水処理に関する技術開発を目的として、主に二項目について研究を行った。下記にそれぞれの結果を示す。 1.新規アノード電極の作成 昨年度開発を試みたグラニュールアノードの開発を引き続き行った。ニュートラルレッド等のメディエーターをグラニュール作成時に添加を行う等の改善を試みた。その結果、僅かながらの出力性能の向上は見られたが、十分な性能を達成することは不可能であった。より導電性の高い素材の利用や装置形状の改善等の抜本的な改善が必要であることが示唆された。 2.実排水組成による微生物燃料電池の連続排水処理特性評価 試験は、それぞれ処理槽の液有効容積120mlを持つ一槽型微生物燃料電池を2台使用した。2台の装置共にアノード電極にはカーボンフェルト、カソード電極にはエアカソードを使用した。排水には廃糖蜜を使用し、電気伝導度確保等を目的としてリン酸緩衝液等を含む培地に所定濃度(500mgCOD/L)になるように希釈して供試した。処理は、前段の微生物燃料電池の処理水が後段微生物燃料電池に流入するプラグフロー型で行った。結果として、HRT各13時間(全HRT26時間)の条件下で、全体での平均COD除去率79.8%、クーロン効率11.6%、出力密度は、前段MFCで0.55W/m3、後段MFCでは0.53W/m3を発揮する事が可能であった。また、上記の装置でHRT一定(全体で24時間)のもと有機物濃度変化によって容積負荷を変更し、その影響を評価した。低容積負荷では有機物濃度不足によって生じる装置の出力密度の低下が顕著であった。一方で高容積負荷時では、メタン生成による電子の損失の影響が大きくなることを明らかとし、微生物燃料電池における最適な容積負荷条件設定に関する知見を収集した。
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