研究課題
宇宙空間には宇宙線という陽子や電子などから構成される粒子が飛び交っている。銀河系内では最大10^<15>電子ボルトまで加速されていると考えられている。近年、超高エネルギー(VHE)ガンマ線観測技術が進歩し、銀河系内で新たな天体が多数発見された。VHEガンマ線は10^<12>電子ボルトより高いエネルギーの粒子から放射されることが知られており、宇宙線加速天体である可能性が示唆される。しかし、VHEガンマ線は陽子、電子いずれからも放射され、その判別は現在のところX線観測が最も有効な手段である。陽子はX線で明るい放射過程がないため、VHEガンマ線以外のエネルギーで暗い「暗黒加速器」が見つかれば陽子加速の証拠を捉えたことになると目され、世界中のX線衛星で追観測が行われている。その一方、「暗黒加速器」は実は年老いたパルサー星雲という電子の加速器で説明ができるという考えもある。VHEガンマ線を担う電子と、X線を担う電子はエネルギーが異なり、X線を出すような高いエネルギーの電子が失われてしまうと「暗黒加速器」としてVHEガンマ線のみで天体が検出されてしまうためである。そこで、本年度は「暗黒加速器」はパルサー星雲と考えて矛盾ないかどうか、パルサー星雲の系統的解析を試みた。その結果、VHEガンマ線とX線の放射領域の違いを考慮すると、観測的に得られた光子スペクトルは各々の領域で電子の最高エネルギーが異なる新たなモデルで説明ができることがわかった。これは、VHEガンマ線を担う電子とX線を担う電子が異なる集団であることを意味しており、X線を担う電子の方が一般的に寿命は短く、「暗黒加速器」は実は年老いたパルサー星雲で説明できる可能性が高まった。この結果は自身の博士論文としてまとめた。さらに、2014年打ち上げ予定のASTRO-H衛星にはX線CCDカメラSXI(Soft X-ray Imager)の開発も行った。SXIは視野が広く、大規模な構造をもつVHEガンマ線天体を一度の観測で捉えられる上、CCDの技術革新により低いエネルギーのX線も検出することが可能となる。本年度は設計・製造された読み出し回路の第一次試作を動作実証と、CCD素子の性能評価を行った昨年度より継続して行った。
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Publication of Astronomical Society Jaoan
巻: 65(印刷中)