本年度に実施した研究の成果として以下が挙げられる。 (1)ケニア農村部における調査 前年度に引き続き、ケニア農村部における地域住民主導による学校の空間整備手法について、4校を選定した上で、学校関係者(教員、保護者)へのインタビュー調査を重ね、より緻密なデータを得ることができた。 さらに、学校の空間整備手法を相対化するため、さらには地域住民の生活・バックグラウンドを理解するため、学校から射程を広げ、住宅の空間整備手法についても明らかにした。19戸の住宅を訪問し、住民へのインタビュー調査及び住宅の実測調査を行った。 (2)ケニア都市部スラムにおける調査 これまでに実施してきた農村部に加え、ケニア都市部スラムにおける学校の空間整備手法についても明らかにした。スラムにおいても農村部と同様に行政の手が行き届かず、ノンフォーマルスクールに代表されるように地域住民主導による学校整備が行われている。本研究において計31校の学校を訪問し、学校関係者へのインタビュー、学校の実測調査を行った。また、農村部と同様に、学校を相対化し、地域のバックグラウンドを理解するため、13戸の住宅を訪問し、住民へのインタビュー調査及び住宅の実測調査を行った。 以上の調査を経て、ケニア農村部及び都市部スラムの両地域における地域住民主導の学校の空間整備手法について、その特徴を明らかにすることができた。両地域において、地域が元々持つ資源(建材、人材、伝統的な技術、周辺環境)を活かした学校の空間整備が行われており、そのことが、学校が地域と結びつく要因となっていることが明らかになった。
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