研究概要 |
本研究は線条体の直接経路及び間接経路の神経活動を初めて明らかにすることで、線条体における情報処理メカニズムについての理解を試みるものである。 既に得られた直接経路特異的な遺伝子組換え系統を用いて,直接経路神経細胞からentopeduncular nucleusへの投射を発見し、これによりゼブラフィッシュにおける哺乳類淡蒼球の相同領域を同定した。この結果は硬骨魚類においても、哺乳類同様の大脳基底核に対応する神経回路が進化的に保存されていることを強く示唆するものである。すなわち、終脳の基本的な構造が硬骨魚類から哺乳類まで保存されていることから、今までげっ歯類、霊長類に集中していた線条体研究をさらに発展させ、進化的に保存された線条体の機能に対する統一的な見解が得られると期待される。現在この領域におけるマーカー遺伝子を同定し,遺伝子組換え系統の作出を試みている。 また、直接経路特異的な遺伝子組み換え系統を用いて遺伝的なカルシウムインジケーターを発現させ,稚魚における線条体の神経細胞の、自発的な神経活動に伴う輝度変化を計測することに成功している。現在はこの系を成魚においても確立すべく、水流や拍動による振動を抑えてゼブラフィッシュの保持が可能な固定方法、及び各種カルシウムインジケーターを検討している。 その後、行動学習成立前、成立後のゼブラフィッシュのin vivoイメージングによって得られた画像から各細胞の活動を解析し、直接経路、間接経路の細胞の活動パターン、学習に伴う活動の変化を捉えることにより、線条体における情報処理メカニズムについての理解を飛躍的に高めると期待できる。
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