研究概要 |
異方性ゲルは濃厚な高分子溶液を架橋剤溶液の中に浸漬し、その界面から透析を起こさせゲル化と配向を起こさせる比較的単純なシステムであるが、界面を通した濃度の勾配という非常に小さなエネルギーで分子が凝集し大きな構造を作るという点に特色がある。本研究は非定常熱力学を用いて行なう基礎的な研究であり、異方性材料の形成過程や物性の理解に役立つと思われる。このような系を用いた研究は申請者らのグループのみで行われてきたが、最近、高強度ゲル生成への応用(Gong et al,Advanced Materials, 2008)、パターン形成研究への応用(Narita et al., Langmuir, 2007)がなされ、広がりを見せている。ゲル構造あるいは異方性についての先行研究は申請者のグループから発表されているが、本研究が目指す蛍光プローブを用いた分子形態変化の研究やシミュレーションに関する先行研究はない。また、幾何学的条件の変化による振動現象など予備的実験から得られたものについても先行研究はない。結晶表面描像を用いた高分子鎖の変形のシミュレーションは異分野の知見を援用するという意味で独創的である。また、高分子溶液中に透析膜を介して架橋剤が進入し配向する行程はゲル中における高分子の蠕動運動についての一般的な知見を与えると考えられる。また、その運動パターンが複屈折で見られる大きなパターンを形成していることから、分子の自己組織化のメカニズムについての記述を可能性にすると思われる。
|