今までに異方性ゲルの吸着材としての研究は、主に高分子溶液と非溶媒を直接接触させる方法で作製された球形のゲルビーズで行われてきたが、その方法だと吸着界面の観察が困難であり、詳細な研究はほとんど行われてこなかった。しかし、2枚のスライドガラスの間に高分子溶液を挟み込み非溶媒に接触させることによって形成された異方性ゲルを吸着槽に浸漬することによって、吸着過程の動的な観察が可能である。これまでの実験例と理論に基づいて、吸着層がゲル中に形成される場合について、吸着物質の濃度やゲルの半径を変化させることで外部環境を変化させた場合において得られるゲルの構造と吸着層形成ダイナミクスの普遍性について考察した。 異方性ゲルをDNA分子を用いて作製することで、その2重らせん構造へ特異的に吸着する発がん性モデル物質の吸着挙動のダイナミクスを測定した。吸着のダイナミクスの実験は、円形めスライドガラスを用いて円筒対称形になるように設定を行った。実験結果はもゲル形成のダイナミクスをよく表すことが出来る"Moving Boundary Picture"を墓にした吸着理論式で吸着の前期過程をよくfittingすることができた。後期過程に関しては、DNA異方性ゲル中央にあるゾルコアを想定することによってよく表すことが出来た。吸着過程をこのような系を用いることで、直接的に吸着層の成長のダイナミクスを測定し、またその過程を理論的にも理解することが出来た。理論構築で用いたMoving Boundary Pictureは、物質の散逸が海面を持ちながら進行する系に適応することが可能であり、イオンや吸着物の流出入による移動に限らず、一般的に応用される可能性が示唆される。
|