研究課題/領域番号 |
11J09801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
[ジョ] 貞恩 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013-03-31
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キーワード | 中国医療伝道協会 / 博医会 / 医療宣教師 / 中華医学会 / 基督教 / 中国近代史 / 医療史 / 中医学 |
研究概要 |
本年度には医療宣教師のアイデンティティ、中医学に対する認識について考察した。 1)2011年9月に明清史学会において口頭発表した内容を修正・補完し、2012年韓国の学術雑誌『明清史研究』37集に掲載した。 2)2012年9-10月に上海での史料調査を行った。上海档案館では、中国医療伝道協会の内部資料や档案史料を集めた。上海図書館では、電子資料として公開されている医療宣教師関係の雑誌や民国時代の医学雑誌を収集することができた。 3}医療宣教師のアイデンティティー医療と伝道の間:本章では医療と伝道のどちらを優先するかという問題をめぐる医療宣教師の論争を紹介し、1900年代以降医療と伝道が分離分離され、医療宣教師は主に医師としての役割を果たすようになったことを明らかにした。医療と伝道の分離は、中国医療伝道協会の役割、ひいては中国での医療活動にも大きな変化をもたらしたのである。史料としては、医療宣教師が残した文章及び全中国プロテスタント宣教師大会の報告書を主に利用した。 4)医療宣教師の中薬に対する認識:最初医療宣教師が中薬を研究した理由は、中国伝統医学を深く理解するためというより、薬の不足といった医療活動の現実的な問題を解決するためであった。ところが1920年代に入ってから、中国人による中薬研究が活発になり、中薬の新たな可能性を発見すると、医療宣教師の中薬に対する認識も大きく変化する。本章では、医療宣教師の中薬に対する認識の変化、それに影響を与えた中国人の中薬の研究活動を分析することで、西洋医学と中国伝統医学の相互作用の一面を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医療宣教師の中薬に対する認識についての研究は順調に進んだ。研究をする中で、医療宣教師のアイデンティティについても考察することができた点は予想外の大きな収穫であった。しかし、中国近代の伝染病対策における医療宣教師の影響に関しては考察することができずに終わったので、当初の予定の達成度としては少し遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
1)中薬だけではなく、中国の伝統医学全般に対する医療宣教師の認識について考察したい。 2)中華医学会との合併後、西洋人医療宣教師の中華医学会での活動や影響について分析する。 3)中国近代の伝染病対策における医療宣教師の影響に関しては考察することができずに終わった。この問題を扱うためには、医療宣教師だけではなく、当時の中国政府における衛生制度の成立など、様々な面からの考察が必要となり、短期間で考察することがとても難しいからである。これからは、様々な史料を集め、中国衛生史の観点からこの問題について研究を進めたいと考えている。
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