研究概要 |
1.神経障害に対してNGFなどの神経栄養因子が有効であると言われ、その受容体であるTrk受容体ファミリーに対する低分子有機化合物のリガンドが発見されている。本研究では、リード化合物の選定が容易と考えられるNGF受容体であるTrkAに対する低分子有機化合物によるリガンド(アゴニスト/アンタゴニスト)創製と構造活性相関の獲得を目的とし、さらに他のサブタイプ(TrkB、TrkC)への拡充を目指した。これを達成するために以下の手法によって研究を行った。 2.リード化合物の分子デザインとその合成法:スクリーニングにより見出された低分子有機化合物のTrk受容体アゴニストの構造を参考にすると、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)のような平面性の高い多環構造の基本骨格を持ち、そこから炭素数3程度の空間的距離を取り、その末端がアミンなどの塩基性官能基であれば、リガンドとなりアゴニスト活性が得られると考えた。そこで、申請書記載の、フェナンスリジノン骨格をはじめとする平面性の高い骨格を、基本骨格候補として採用した。また、誘導体展開を行っていくための合成経路の検討を行い、各種の三環系のリード化合物を得た。 3.活性評価:合成した候補化合物を用いて、PC12細胞(ラットの副腎髄質由来の褐色細胞腫)を処理し、形態変化による樹状突起の伸長を観察することで、化合物のTrkAアゴニスト作用を評価しようとした。Positive controlである神経成長因子NGFの投与では、再現性良く形態変化が見られたものの,低分子化合物のpositive controlである三環系抗うつ薬Amitriptylineや自らが合成した化合物群では、再現性が得られなかった。
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