研究課題/領域番号 |
11J09843
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小手川 正二郎 明治大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | レヴィナス哲学 / 言語論 / 理性論 / 感性論 |
研究概要 |
昨年度より継続してなされたパリでの研究において、パリ第十大学のJ-M・サランスキ教授のもとで、レヴィナスの理性論・言語論・感性論を主題とした研究をとりわけ分析哲学との対比という観点から進捗・発展させた。その際、パリ国立図書館で、レヴィナスの同時代の資料の文献学的な調査を継続的に行った。帰国後は、慶應義塾大学に提出した博士論文の公開審査を経て、2012年11月7日に博士号を取得した。公開審査では、主査の斎藤慶典教授、副査の合田正人教授、田口茂准教授より様々な示唆を頂き、ハイデガーとの体系的比較やレヴィナス後期の思索との関連といった今後の課題が明確化された。また4月にはパリの国際学生都市でレヴィナスの第三者論について仏語で発表、帰国後もメルロ=ポンティサークルシンポジウム「メルロ=ポンティとレヴィナス」をオーガナイズして提題するなど博士論文の成果を基盤にして、さらなる研究に取り組んだ。レヴィナスの理性論のより体系的な評価については三田哲学会で、ハイデガーとの体系的な比較についてはハイデガー研究会でそれぞれ発表した。博士論文以降の課題となるデリダの「暴力と形而上学」のレヴィナス読解に対する体系的応答の試みの構想を『現代思想』の「研究手帖」において発表し、とりわけレヴィナスの暴力論に焦点をあてた研究を哲学倫理学セミナーで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パリでの滞在期間中に60年代から70年代の多くの文献にあたることができ、また分析哲学との関連についても多くの研究者と議論することで予想以上の研究の進捗につながった。帰国後は、博士論文以後の課題が明確されたことや、メルロニポンティサークルのシンポジウムを任されたこともあり、これまでの研究成果を総合・分析することができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず昨年度より継続して取り組んでいる、デリダによるレヴィナスの「他者論」的読解に対して、レヴィナスの側からの可能な応答を模索し、前年度の成果と合わせて体系的な形でまとめ、博士論文と統合する形で、出版する計画を進めている。また1960年代~70年代にかけてのレヴィナスと同時代の思想家の調査を行い、歴史的な観点から、当時の思想状況を明らかにすることを試みる。そのうえで、昨年度からなされてきたレヴィナスと分析哲学との対話の可能性を、日本倫理学会や現象学会で発表することを試みる。またより具体的な文脈、とりわけ生命倫理やケアの倫理においてレヴィナスの議論がもつ意味を模索することを試みる。
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