研究概要 |
軽度認知機能障害(mild cognitive impairment : MCI)を有する高齢者における脳活動の活性化の促進を目的とした効果的な介入方法を探り、その介入効果を明らかとすることを目的とした。特に後期高齢者や超高齢者においても安全に実施可能なプログラムを作成することとした。 MCI高齢者(n=310)を対象として、3軸加速度内蔵の身体活動量計によって計測した強度の異なる身体活動量と海馬容量、記憶機能との相互関連性を検証した結果、中強度の身体活動時間は海馬容量と有意な正の相関関係(r=.20, p<.01)を認め、年齢で調整した後も関連性は有意であった(β=.17, p<.01)。しかし、低強度の身体活動時間と海馬容量の有意な関連性は認められず、いずれの強度の身体活動量も記憶検査とは有意な相関関係を示さなった。共分散構造分析において最良な適合度を示したモデルでは、中強度の身体活動量は記憶機能とは直接的な関連は認めなかったが、中強度の身体活動量は海馬容量と有意な関連性を有しており(β=.20, p<.01)、海馬容量が記憶機能と直接的な関連性を示した(β=28, p<.01)。つまり、中強度の身体活動量は海馬容量を介して記憶機能に影響していることが示された。 MCIを有する75歳以上の後期高齢者(n=43)に対する中強度の運動や対人コミュニケーションを促す介入による効果を検証した結果、内側側頭領域における脳萎縮が対照群では有意に進行しており(p=.01)、全脳における萎縮領域の割合も増加していたが(p=.01)、運動教室群では有意な変化は認められず、脳萎縮の程度は維持されていた。認知機能検査値については、群(対照と介入)と時間(介入前と後)を要因とする二元配置分散分析の結果、verbal fluency testにおいて有意な交互作用を認め、介入群での改善を認めた。
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