研究課題/領域番号 |
11J09900
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小村 優太 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD) (20726822)
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キーワード | イスラーム / 哲学 / イブン・シーナー / アリストテレス / 内的感覚 / 表象 / 判断力 / 認識論 |
研究概要 |
平成24年度において研究代表者は、東方キリスト教学会にて、「ヤフヤー・イブン・アディー『徳の彫琢』における「完全な人間」」の口頭研究発表、新プラトン車義協会にて、以前からの研究助成企画(助成金は辞退済)「イブン・シーナーからスフラワルディーに至る「鳥物語」の系譜」の研究報告を行った。 以上はイブン・シーナーを起点と考えたイスラーム哲学において、イブン・シーナー以前(ヤフヤー・イブン・アディー)とイブン・シーナー以降(スフラワルディー)の思想潮流を明らかにするという意味で、研究のイスラーム思想史中における立ち位置を明確にする一助になったと思われる。 また同年9月には東京大学UTCPにおいて、「イスラームにおける障害の表現」と題する発表を行った。 同年中には博士学位請求論文『イブン・シーナーにおける内的感覚の形成と発展』を提出し、これまでの研究の一区切りを付けた。同論文は平成25年5月現在、審査中である。同論文のテーマである内的感覚は、イスラーム哲学、とりわけイブン・シーナーにおいて著しく発展した分野であり、中世西洋の哲学における範型を作り上げたと言っても過言ではない。その意味で、内的感覚の発展史を明らかにするということは、イスラーム哲学史のみならず、中世哲学全体の発展に寄与することが可能である。 さらに12月にはエジプト、カイロのドミニコ会東洋研究所に赴き、同地に10日ほど滞在し、研究資料の収集に努めた。これらは日本では入手の困難なものが多く、研究代表者の研究の推進に大いに資することと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における研究はおおむね順調に進展していると思われる。本年度は研究発表、研究報告、口頭発表、海外での資料収集、さらに博士学位請求論文の執筆も行い、前年度よりも幅広い分野での研究活動を遂行することが出来たと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において、初期イスラームの翻訳期哲学、とくに「キンディー」の思想を分析し、それと共に、後期古代の註釈家たちの註釈の初期イスラーム哲学への影響を検討する必要がある。とりわけ、註釈家アンモニオスを祖とする、フィロポノス、シンプリキオス、ダマスキオスなどのアンモニオス学派の註釈と、それらのキンディー、そしてファーラービーなどに対する影響関係を詳細に研究しなければならない。そのためには、関連する資料を検討し、最終年度もまた外国に赴き、必要な写本などを収集する必要がある。
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