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2011 年度 実績報告書

新規リボソーマルRNA修飾の同定および機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 11J09964
研究機関東京大学

研究代表者

木村 聡  東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)

キーワードリボソーム / RNA修飾 / ヒドロキシル化
研究概要

生物において、メッセンジャーRNA上に存在する遺伝情報から生理活性を有するタンパク質を合成する過程(翻訳過程)が正しく行われることは生命活動を維持するために必須である。タンパク質の合成はリボソーマルRNA(rRNA)と呼ばれるRNAとリボソーマルタンパク質からなるリボソームと呼ばれる細胞内顆粒構造体によって担われているが、その生合成、翻訳機能の効率や正確性は様々な因子による調整機構により担保されていると考えられている。本研究ではそのような調整機構のなかでもrRNAの転写後修飾に着目した。原核生物のモデル生物である大腸菌の23SrRNAのペプチド反応を触媒する活性中心近傍には化学構造が未同定なシチジンの誘導体が存在している。この修飾シチジンは大腸菌の生育段階においてその修飾率が変化することから、生育環境依存的なリボソーム機能の調節を担っていることが示唆されている。しかし、この修飾塩基は構造をはじめ、その生合成遺伝子および機能はほとんど不明であった。そこで本研究ではその化学構造を明らかにすると同時に、生合成機構およびその機能を明らかにすることで新たなリボソーム機能の調節機構の提唱をめざし研究を行っている。
当該年度の研究により、まず新規rRNA修飾の化学構造が、シチジンの5位にヒドロキシル基が付加された5-ヒドロキシシチジン(ho5C)であることを突き止めた。この結果は当初の目的のうちの一つである化学構造の同定を達成したことを意味している。次にho5Cの生合成に関わる遺伝子を探索したところ、r1hAという遺伝子を同定した。またこの遺伝子がコードするR1hAはリボソームの生合成中間体の画分に存在することを見出した。このことはR1hAが23SrRNAに直接ヒドロキシル基を導入する酵素であることを示唆している。以上の結果から当該年度の研究によって新規rRNA修飾の構造、および生合成経路の一端を明らかとなったといえる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度の研究により、研究の最初の関門であったrRNA修飾の化学構造の同定およびその生合成遺伝子の同定に成功した。さらにこれら二つの成果は今後の組み換えタンパク質を用いた生合成機構の解析やその遺伝子欠損株を用いた機能解析などを可能にする成果である。そのため目的であった生合成機構と機能を検討する手立てがそろい、今後さらに研究を展開することが可能となったので順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

今後は新たに同定したRh1Aの組み換えタンパク質を作成、試験管内再構成反応を試みることでRh1Aがヒドロキシル化を担う酵素であることを証明するとともに、その生化学的な酵素反応機構を明らかにしていくことを目指す。またさまざまな条件下においてRh1Aの欠損株の生育やリボソームの機能、生合成を解析することにより、この修飾が生育環境依存的なリボソームの機能調節を行っているという仮説の検証を行っていきたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Base methylations in the double-stranded RNA by a fused methyltransferase bearing unwinding activity2012

    • 著者名/発表者名
      Kimura S., Ikeuchi Y., Kitahara K., Sakaguchi Y., Suzuki T., Suzuki T.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Research

      巻: (掲載確定)(印刷中)

    • DOI

      10.1093/nar/gkr1287

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural basis of tRNA agmatinylation essential for AUA codon decoding2011

    • 著者名/発表者名
      Osawa T., Kimura S., Terasaka N., Inanaga H., Suzuki T.
    • 雑誌名

      Nature Structural & Molcular Biology

      巻: 18 ページ: 1275-1280

    • DOI

      10.1038/nsmb.2144

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Biogenesis of 2-agmatinylcytidine catalyzed by the dual protein and RNA kinase TiaS2011

    • 著者名/発表者名
      Terasaka N., Kimura S., Osawa T., Numata T., Suzuki T.
    • 雑誌名

      Nature Structural & Molecular Biology

      巻: 18 ページ: 1268-1274

    • DOI

      10.1038/nsmb.2121

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deficit of tRNA(Lys) modification by Cdkall causes the development of type 2 diabetes in mice2011

    • 著者名/発表者名
      Wei FY., Suzuki T., Watanabe S., Kimura S., Kaitsuka T., Fujimura A., Matsui H., Atta M., Michiue H., Fontecave M., Yamagata K., Suzuki T., Tomizawa K.
    • 雑誌名

      The Journal of Clinical Investigation

      巻: 121 ページ: 3598-3608

    • DOI

      10.1172/JCI58056

    • 査読あり
  • [学会発表] RNAヘリケース活性を有したRlmKLによる23Sr RNAのジメチル化とリボソームの生合成2012

    • 著者名/発表者名
      木村聡、池内与志穂、北原圭、坂口裕理子、鈴木健夫、鈴木勉
    • 学会等名
      第1回Ribosome meeting
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20120315-20120316
  • [学会発表] Base methylations in the double-stranded RNA by a fused methyltransferase bearing unwinding activity in ribosome assembly2011

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Kimura, Yoshiho Ikeuchi, Kei Kitahara, Yuriko Sakaguchi, Takeo Suzuki, Tsutomu Suzuki
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜,神奈川県
    • 年月日
      20111213-20111217
  • [学会発表] Base methylations in the double-stranded RNA by a fused methyltransferase bearing unwinding activity2011

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Kimura, Yoshiho Ikeuchi, Kei Kitahara, Yuriko Sakaguchi, Takeo Suzuki, Tsutomu Suzuki
    • 学会等名
      The 16th annual meeting of the RNA society and the RNA society of Japan 13 th annual meeting
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20110614-20110618

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公開日: 2013-06-26  

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