研究課題/領域番号 |
11J09990
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
山田 早紀 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | KTH CUBEシステム / 裁判員制度 / 供述調書 |
研究概要 |
本研究の目的は、供述調書を裁判員にわかりやすく提示する目的で開発されたKTH(KACHINA CUBEシステム・TEM・浜田メソッドの略。主に裁判の争点をマトリクス状に設置した概念マップを底面、供述の聴取された時間軸を垂直面に取った3次元空間に供述者別の色分けをした供述調書を配置するシステム)を実務で活用できるシステムとして提案することであった。 裁判員裁判の審理のわかりやすさが低下していることから、わかりやすさの向上は急務である。本年度は供述調書を裁判員に提示するためのツールKTHについて「研究数の蓄積」「作成方法のマニュアル化」「効果測定準備」を行なうことができた。まず研究の事例数を増やす上で重要なのは事件のバリエーションを増やすことであるため、事件の被告人数と事件の種類を変えたKTHを3件作成し、検討を加えた。その結果、概念マップの情報量の調整の必要性を明らかにすることができた。次に上記の3件のKTHについてそれぞれを法学者・弁護士に見てもらって意見を求めることで、作成手法について検討した。その結果、概念マップについてはある程度の「情報の少なさ」が見やすさやわかりやすさにつながる可能性が示唆された。このことから概念マップを作成する際には争点を細かく分離して、一度に提示する情報量を調整し、弁護人の要請である「シンプルな」マップを目指すことをマニュアルに明示する必要があることが分かった。 本年度はさらに効果測定の実験手法について文献レビューを行なった。弁護人等がKTHを用いて説明する場面を想定し、法学の専門家や実務家と協働して実験するための事件のシナリオづくりの準備を行なった。 以上の研究成果は、本研究を遂行する上で基幹となる重要な成果である。KTHは先行研究のない研究であることから、事例数を増やしながらそこから得た知見や結果を蓄積していく必要がある。本年度の研究成果は新しいKTH作成やマニュアル作成のために重要な役割を果たす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のうち、「KTH研究数の蓄積」「KTHマニュアルの作成」については計画通り進んでいる。今年度作成したKTHから得た知見をもとにさらなるKTH作成の手法について着実に検討を重ねている。「KTHの効果測定」に関しては実施に至っていないが他の研究者らと検討し文献レビューを重ねながら、準備をすることができているため、次年度以降の研究成果が期待できる。さらに研究成果も継続的に報告し、議論を行なうこともできている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、引き続きKTH研究の蓄積を行なうと同時にKTHの効果測定を行なって実務使用上のさらなる改善を行なう。また次年度以降は効果測定やそこから得られた知見を公表することを目指す。これらの得られた知見をまとめ、心理学、法学の専門家との議論を一層深めながら、博士論文執筆を目指す。平成23年度の裁判員経験者アンケート(最高裁判所2012年3月発表)では、裁判官、検察官、弁護人それぞれの説明のわかりやすさについて聞いていたが、弁護人のわかりやすさは他の法曹と比較して格段に低いことが明らかになっている。この調査を踏まえて法曹三者の間で公正な審理を行なっていくため、特に弁護人のKITHの実務的利用を焦点に当てた取り組みを展開する。
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