研究概要 |
本研究の目的は、「あかり」で取得した褐色綾星の2.5-5.0μmの分光データを用いて、『褐色倭星の上層大気における非熱平衡化学組成の普遍性を調査する』とともに、『分子組成を熱平衡状態から逸脱させる物理・化学過程を解明する』ことである。本年度は、新たな大気モデルの導出を目指し、次の通り研究を実施し、成果を得た。 1.信頼性の高いスペクトルを得るためにデータ処理技術の改善を行い、より高品質なスペクトルの抽出を行い、褐色綾星の2.5-5.0μmの連続的かつ高品質なスペクトルデータセットを世界で初めて作成した。 2.各天体の観測スペクトル中におけるCH4,CO,CO2の吸収バンド強度を調査し、COやCO_2の吸収バンド強度の熱化学平衡からの逸脱がT型矮星において普遍的現象であることを示した。 3.褐色矮星の大気モデルUnified Cloudy Model(Tsuji 2002, 2005)を用いた解釈を試みた。 (1)スペクトル型の変化に伴い光球からのダストの消失を示唆する結果を得た。 (2)L5型矮星においてCH,の吸収バンドの有無が天体の質量およびダスト量の指標になることを示した。 4.当初予定していた研究計画の一つ『上層大気の化学組成比をパラメータサーベイにより見つけ出し新たな大気モデルを導出する』に物理的根拠を加えた解析を行った。CO_24.2pmの吸収バンド強度の不一致については、これまで用いてきた太陽金属量と異なる「CおよびO」の元素存在量によって説明可能であることを示した。
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