研究課題/領域番号 |
11J10052
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 邦明 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 農地改革 / 農家経営 / 土地改良事業 / 土地改良区 / 農業委員会 / 短期農業生産計画 / 家計消費 / 家計調査 |
研究概要 |
2012年度は、研究課題のうち、(1)戦後の農地改革に関する研究・史料調査、(2)戦前から戦後の土地改良区に関する研究・史料調査、(3)1950年代の農業・農村政策に関する研究・史料調査の3点を進めた。また、(4)研究受入者である加瀬和俊教授の下で、戦前日本の家計消費に関する研究に着手した。 (1)については、農地改革の買収売渡対象となる農家経営の土地と家族労働力に関するミクロデータを構築し、改革の影響を個別農家レベルで把握した。改革実施前に3-4ha以上を有していた農家80戸のうち、すべての農家が一定の農地買収が実施された。その結果、3.4ha以上有する農家は40戸と半減し、その多くが3-4~4haの範囲に収まった。 すなわち、改革実施過程で容認された超過売渡は0.5ha未満であり、3.4ha前後を基準とした平準化が行われたことを明らかにした。 (2)については、2011年度から引き続き、新潟県庁、新潟県立図書館・文書館、新潟市役所歴史文化課、西蒲原土地改良区が所蔵する史料に対する調査を実施した。これによって戦後直後の土地改良計画、事業の経過、事業結果について詳細なデータが得られた。 (3)については、農地改革直後から農業・農村政策として展開した短期農業生産計画に関する史料調査を中心に行った。東京大学社会科学研究所、新潟市役所歴史文化課が所蔵する短期農業生産計画に関する報告書、農業委員会会議録、事業計画書の収集を行った。 (4)については共同研究者の一人として、住居費に関する研究にとりかかった。2012年度は住居費に関連する都市経済、住宅政策、建設産業史などの先行研究のサーベイと戦前の国勢調査や厚生省の住宅調査などの官庁統計を把握した。また、1917~1919年に高野岩三郎によって実施された東京市および隣接郡部の小学校教員生計調査の家計簿を利用して、夫婦世帯の1年間の家計簿データをデータベース化し、月次・日次レベルの家計分析を行った。そこから教員世帯の家計の変動性を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2012年度に予定していた、(1)農地改革に関する研究成果を学術雑誌に掲載のうえ公表する予定が遅延している。(2)土地改良に関する研究成果を学会報告等を通じて公表する予定が遅延している。以上の(1)と(2)が遅延した要因は、研究過程で史料調査不足が判明し、補足の史料調査を行ったためである。また、(3)1950年代の農業・農村計画に関する研究に関しては、おおむね順調に資料調査・研究史整理を進めた。以上、三つの研究進捗状況から総合すると、「研究の目的」の達成度は(4)の「遅れている」が妥当な評価だと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
第一に農地改革に関する研究成果を取りまとめ、学術雑誌(政治経済学・経済史学会『歴史と経済』)へ投稿する。第二に、土地改良事業に関する研究成果について学会報告、学術雑誌(社会経済史学会『社会経済史学』)へ投稿する。第三に、1950年代の農業・農村計画に関する史料調査を完了させ、研究を取りまとめる。上記の三点とこれまでの研究成果をまとめ、所属研究機関へ学位請求論文として提出することが目標である。
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