研究課題/領域番号 |
11J10107
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
渡部 貴志 独立行政法人農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | 窒素除去 / 排水処理酵母 / 高濃度有機性排水 / S.cerevisiae / DNAマイクロアレイ |
研究概要 |
○具体的内容 本研究では、「窒素を高蓄積する排水処理酵母の育種」により、「高濃度有機性排水からの効率的な窒素除去方法の開発」を目的としている。本年度では、「S.cerevisiaeの窒素取込み機構の解明」と「排水処理酵母からの窒素高蓄積変異株の取得」の二点を目標として検討し、以下の概要の成果を得た。 ・S. cerevisiaeの窒素取込み機構の解明 前年度開発した塩化メチルアミン耐性変異株の選抜手法で取得したS. cerevisiaeの窒素高蓄積変異株について、遺伝子配列解析を行うことによって、URE2遺伝子に変異が入っていることを確認した。この結果から窒素蓄積制御系に与える影響について考察し、これまでの成果をBioscience, Biotechnology, an Biochemistry(BBB)に誌上発表した。 ・排水処理酵母からの窒素高蓄積変異株の取得 前年度開発した塩化メチルアミン耐性変異株の選抜手法を、排水処理酵母H. anomala IFO0963株および飼料酵母C. utilisIFOI086株に応用し、それぞれから窒素高蓄積変異株の取得に成功した。一方、担子菌系の酵母では、本方法が適用できなかったので、新たにプロテアーゼ活性を指標にする選抜方法を開発し、葉面酵母P. antarcticaから窒素高蓄積変異株の取得に成功した。実際の排水である焼酎粕排水で処理試験を行ったところ、取得変異株は親株に比べて12~1.3倍の窒素を除去した。また、飼料酵母C. utilisの排水処理で得られた菌体については、豊富なタンパク質源の飼料、酵母エキスとなることを確認した。 ○意義・重要性 バイオエタノール生産の本格化に伴い、その蒸留排水の排出量が飛躍的に増加することが予測される。このような高濃度有機性排水は、下水処理などの活性汚泥法では処理が出来ず、またメタン発酵等の嫌気的処理では、窒素が除去できない。本研究が完成することによって、これらの問題解決につながる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度から研究計画が前倒しで検討できていたため、本年度計画の最重要課題である「高窒素蓄積排水処理酵母の取得」が予定より早く行うことが出来た。そして、その成果をさらに進展させて「高窒素蓄積飼料酵母の取得」と「新規な窒素の蓄積量が増加させる方法の開発」という、当初の予定していた計画以上の成果が得られた。また、次年度の計画であった、実排水での連続処理試験についての基礎データを蓄積することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終目標は、窒素除去能を強化した排水処理酵母の有用性を実証することである。従って、実際に排出される様々な高濃度有機性排水を入手するため、外部の企業・機関へ積極的に交渉して協力していただくことが重要となる。そこで、前年度から協力いただいている企業とも、引き続き協力をいただけるように綿密に打ち合わせして良好な関係を築き上げ、その他の企業にも広くアウトリーチ活動を積極的に行っていく。 また、本年度では研究成果を論文にまとめる過程で、これまで学会等で交流を深めてきた様々な専門家からご意見をいただいた。このように、論文等に記載されず個々の専門家が持つオリジナリティーあふれる情報についてもご教授いただけるように、引き続き学会発表や研究室訪問等の交流を積極的に行っていく。
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