○具体的内容 本研究では、「窒素を高蓄積する排水処理酵母の育種」により、「高濃度有機性排水からの効率的な窒素除去方法の開発」を目的としている。 ・三角フラスコ培養での窒素除去・蓄積成分の解析 前年度には排水処理酵母や飼料用酵母に応用して、窒素蓄積能強化株を作成し、焼酎粕排水での能力評価を行った。本年度はその成果を日本醸造協会誌に誌上発表した。焼酎粕排水を用いたフラスコ培養での予備試験の結果、pHを弱酸性域に維持することにより、有機物除去量が増加することを見出した。そこで、酵母の窒素蓄積成分の解析は、もう一つの課題であるリアクターを利用した半回分連続処理試験で行った。 ・Jar-fermenterなどリアクターを利用した半回分式連続処理試験 焼酎粕排水の処理において、酸を添加することにより酵母の至適pHである5付近に維持することによって、有機物及び窒素除去量の増加を期待し、リアクターを用いた半回分式連続試験によって、実際にその効果を確認した。記検討によって、大量の酵母が生産されるため、飼料一般成分および、アミノ酸組成について解析した。その結果、pH調整の有無による飼料一般成分に与える影響はなかったが、硫酸添加によるpHを調整した酵母は、含硫アミノ酸であるメチオニン含量がpH無調整の3倍に増加していた。以上の成果について、SpringerPlusに誌上発表し、JSPS-PDの研究計画の課題は、全て当初以上の成果としてまとめることが出来た。 ○意義・重要性 バイオエタノール生産の本格化に伴い、その蒸留排水の排出量が飛躍的に増加することが予測される。このような高濃度有機性排水は、下水処理などの活性汚泥法では処理が出来ず、またメタン発酵等の嫌気的処理では、窒素が除去できない。本研究が完成することによって、これらの問題解決につながる。
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