研究課題/領域番号 |
11J10135
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 万利子 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 身体知 / スキル / 視覚的姿勢制御 / アフォーダンス |
研究概要 |
本年度は、けん玉エキスパートの「ふりけん」というわざを対象として、身体知における視覚の役割を視覚的スキルの再組織化という点から検討する実験の準備と実施をした。 身体知における視覚の役割については、以前にけん玉エキスパートの視環境を数種類の方法で操作した実験を行っており、そのデータをまとめたものを2011年7月にブラジルで行われた第16回国際生態心理学会において「Visual Control of Posture and Perceptual Learning in Kendama」というタイトルでポスター発表した。この発表を通して(1)エキスパートが視覚的スキルをいかに再構築していくのかを明らかにするには、視環境を制約した状況のもとでエキスパートのふるまいを複数回にわたって記録することが必要である、(2)視環境の操作をより正確に制御・記録できる装置・システムを用いるほうが望ましい、という改善点が浮き彫りになった。そこで、2011年10月下旬より、わざにおける視覚的スキルの再構築の過程を追う実験の準備を始め、動作解析装置(Vicon460)と科研費により導入した視野遮蔽装置(PLATO)を用いた実験環境を整えた。そして、2012年2、3月に週に2回、4週間にわたり、視環境をPLATOで実験的に操作した条件のもとで、けん玉のエキスパート1名(けん玉5段、国内最高レベルの実力保持者)のふりけん動作を記録した。この実験のデータは現在解析中であり、2012年度には別のけん玉エキスパート(2,3名)を対象とした同様の実験を実施予定である。 なお、以前より投稿中であった、けん玉エキスパートとノービスの視覚的な姿勢制御を比較することにより身体知における視覚について検討した論文が、2011年11月に英文誌(Ecological Psychology)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、視覚的スキルの再組織化の過程を追う実験をけん玉エキスパート2,3名を対象として実施する予定であったが、実際には1名のみを対象とした。しかしながら、実験の前後にスクリーニングを行うなど、計画していた実験内容をブラッシュアップさせることができ、また、実験環境の整備は完了できたと考えられるため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新たにけん玉エキスパート2,3名を対象として、本年度に実施した実験を継続する。 実験と並行して、動作解析装置で記録した時系列データを用いて、時系列データの複雑な構造を明らかにできるRQA(recurrence quantification analysis)、DFA(Detrended Fluctuation Analysis)という解析と従来の定量的解析(身体運動の位置・速度、ばらつきの算出)を行う。それらの結果を合わせ、身体知を総合的に評価する。
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