研究概要 |
今年度(2011年度)は、第一に、市民参加の事例検討として、2007年および2009年に実施された「ヨーロッパ市民コンサルテーション(European Citizens'Consultations,ECC)」についての考究を行った。これは、欧州委員会と各国市民団体の協働のもとに、スウェーデンをはじめとするEU加盟全27ヶ国において、市民討議会を開催するとともに、それらを合わせて「一つのヨーロッパの世論」を作るべく実施された大規模討議プロジェクトである。国民国家(nation-state)レベルと超国家(transnational)レベルの間を行き来する、新たな形態の市民参加の動向を把握することは、採用研究課題の推進にとって、極めて重要である。同時に、市民社会の「ヨーロッパ化」は、各国レベルの民主主義にも大きな影響を及ぼすという点においては看過し得ない現象である。討議デモクラシー論の潮流の中での位置づけを考慮しながら(このECCの)背景や制度的特徴を詳細に分析した成果は、単行本所収論文として、2012年1月に刊行された。 第二に、スウェーデンの分権化改革と市民社会論についての書籍・論文の収集につとめた。2012年2月~3月には、約10日間の日程でスウェーデンに短期滞在し、王立図書館や大学図書館などにおいて、文献の複写の作業を行った。これと並行して、比較の素材となる他国の事例についても状況を正確に把握すべく、雑誌所収論文を中心に関連資料の収集につとめた。以上は、次年度以降の研究に向けての予備的作業でもある。
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