研究課題/領域番号 |
11J10159
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
真田 原行 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 視覚性ワーキングメモリ / 視覚性情報ワーキングメモリ / 空間性情報ワーキングメモリ / 処理容量 |
研究概要 |
視覚性ワーキングメモリ(以下視覚性WM)に対する動機付けの影響を解明していくには、その前提として視覚性WMのメカニズムのさらなる解明が不可欠である。そこで本年度は、そのメカニズム解明にとって大きな問題である「視覚性情報(色・形など)を処理するワーキングメモリと、空間情報を処理するワーキングメモリの関係性」について検討するために、文献調査と行動実験を行った。視覚性情報(色・形など)を処理するワーキングメモリ(以下、視覚性情報WM)と、空間情報を処理するワーキングメモリ(以下、空間性WM)とは、その処理容量を異にしているとこれまで主張されてきたが(Logie.,1995)、近年その主張に対して異なる見解を示すデータや仮説が提出されてきている。特に、Wood.,(2011)は色・形などの視覚性情報WM課題と、空間性WM課題を組み合わせた二重課題を用いて、視覚性情報であっても、形の処理する場合や、色・形などが結合された物体を処理する場合には、空間性WMの処理と干渉を起こすことを示した。しかしながらWoodの手続きにおける空間性WM課題では、記憶すべき場所を示す刺激がすべて同時に呈示されているために、その課題で記憶されているのが純粋な空間情報ではなく、刺激の位置を主観的に結んで作られる形の情報まで含んでいる可能性があった。このことから、単純にWoodの研究結果から、空間性WMと視覚性情報WMとの干渉について議論することはできない。そこで申請者は、より純粋に空間性WMの処理容量を計測できるよう、記憶すべき場所を示す刺激を同時にではなく順次呈示するようWoodの手続きを改良し、Woodの実験結果が追試できるかを行動実験により検討した。その結果、改良した手続きにおいては、Woodの見解と異なり視覚性情報WMは空間性WMとは干渉を起こさないことを示唆するデータを得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究目的の達成において必要不可欠である基礎メカニズムの解明に関して,当該分野の中でも新たな知見をもたらすことができ、さらにその解明を進めるための計画と実験手続きの開発まで行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
「視覚性ワーキングメモリと、空間性ワーキングメモリの関係性」という問題について多角的に取り組むため、上で用いた行動実験とは別の手続きを用い、さらに脳波測定を行う実験計画を進めている。この実験に関してはすでに実験プログラムを作成しており、平成24年度からは実際に実験を行う。またこれらの結果を踏まえた上で、更なる視覚性ワーキングメモリのメカニズム解明と、視覚性ワーキングメモリの処理過程の中で、動機付けはどのようにしてその機能を向上させていくのかについて検討していく。
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