研究課題/領域番号 |
11J10196
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
菊池 由葵子 茨城大学, 教育学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 自閉症スペクトラム / 顔 / 注意 / アイコンタクト / 模倣 |
研究概要 |
本研究では、自閉症者における他者に対する選好の弱さに着目し、他者の顔を注視したり、他者とアイコンタクトをとることによって、対人コミュニケーションや学習に重要な役割を果たしていると考えられる模倣行動が向上するかを検討した。昨年度の実験により、自閉症児は定型発達児にくらべると、手のポーズの模倣に困難を示し、モデルと対面した状況では逆さバイバイのように、手を裏返して模倣する頻度が高いことという先行研究の結果が追認された。しかし、対面しているモデルとアイコンタクトをとっている時ととっていない時で比較すると、自閉症児ではアイコンタクトなし条件よりアイコンタクトあり条件で、手のひらの向きもモデルとより一致した模倣を行っていることが分かった。今年度は、昨年度の統制実験として、刺激は映像で呈示し、アイトラッカーを用いて刺激呈示中の眼球運動も計測した。その結果、昨年度と同様に、自閉症児・定型発達児ともに、アイコンタクトあり条件のほうがアイコンタクトなし条件より、モデルの手のポーズと一致した模倣行動を行うこと、さらに、自閉症児ではアイコンタクトなし条件よりアイコンタクトあり条件で、手のひらの向きもモデルとより一致した模倣を行うことが示された。また、自閉症児では、アイコンタクトなし条件よりアイコンタクトあり条件で、モデルの顔に対する注視量が多いことが分かった。自閉症児において、対面している他者とアイコンタクトをとることで、よりモデルの手のポーズと一致した模倣をするという今年度までの結果は、現在療育の一貫として行われている他者と視線を合わす訓練の裏づけともなると考えられる。以上の成果は、2013年5月にSan Sebastianで開かれる12th Inteational Meeting for Autism Researchで、ポスター発表として採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、昨年度の結果が追認でき、アイトラッカーを用いたことで注視パターンも計測できたので、研究結果はより頑健なものになったと考えられる。昨年度と今年度の結果をまとめて国際学術誌に論文投稿できるため、達成度はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、より低年齢の自閉症幼児から青年期・成人期の自閉症者を対象として、他者に注意を向けることと社会的反応の促進について検討してきたいと考えている。他研究機関との連携を増やして、幅広い年齢層の自閉症者を対象に共同研究も行っていきたい。また、自閉症診断の補助として国際的に使用されているADOS (Autism Diagnostic Observation Schedule)を研究データに含められるようにしたいと考えている。
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