研究課題/領域番号 |
11J10223
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 俊之 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | ミツバチ / ローヤルゼリー / 外分泌腺 / プロテオミクス / 分泌性タンパク質 / カースト分化 / プライマーフェロモン / 社会性 |
研究概要 |
ローヤルゼリー(RJ)と、その由来外分泌腺である下咽頭腺および、我々の先行研究により由来外分泌腺と考えられる後脳腺、胸部唾液腺の各々からタンパク質を抽出し、ショットガンプロテオミクスによりタンパク質を網羅的に同定した結果、各々から52、673、776、889種類のタンパク質を同定した。これらに対し、由来分析、細胞内局在分析および、外分泌腺の機能分析のための、バイオインフォマティクス解析を行った。その結果、RJを構成するプロテオームが、下咽頭腺に加えて後脳腺、胸部唾液腺からの分泌性タンパク質のカクテルであることが示唆された。また、各々の組織で発現する分泌性タンパク質のリストから、RJに含まれうるトータルのタンパク質のリストを作成した。加えて、RJの由来外分泌腺三つに対し、主要に発現するタンパク質を比較し、組織選択的に発現するタンパク質に対し、KEGG pathway解析を行った結果、下咽頭腺ではタンパク質発現に関連するタンパク質が高発現しており、これらが下咽頭腺の分泌性タンパク質の高発現能の分子基盤であると考えられる。加えて、後脳腺では炭水化物、脂質、アミノ酸の代謝、分解能の亢進が示唆された。これらにより、我々の先行研究[Fujita,et al.2010]で提唱された、後脳腺において炭水化物性のプライマーフェロモンであるオレイン酸エチルの合成、代謝が行われている仮説が支持される結果を得た。ここまでの結果について、現在論文執筆中である。さらに、幼虫の食べた分泌性タンパク質が消化管を透過する可能性を検討する目的で、蛍光タンパク質を用いることを考案し、eGFP、mVenus、mCherryを各々クローニング、タンパク質発現・精製を行った。これらと分泌性タンパク質のフュージョンタンパク質を幼虫へ食べさせ、その挙動を蛍光イメージングにより検討できると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画1年目の、「ローヤルゼリーの構成タンパク質とその由来のプロファイリング」を予定通り行った結果について、国際学会において発表を二回行ったのに加えて、論文執筆中であり、順調である。また、「IDGF4がカースト分化に与える影響の検討」について、準備段階の分泌性タンパク質複数のクローニングおよび透過性検討のためのコンストラクションを行っており、おおむね順調と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
年次計画2年目の「ミツバチ遺伝子導入系統作出の検討」を行うため、各種トランスポゾンの入手を目指してトランスポゾンを所有する研究者とのコンタクトを試みたが、複数の研究室と連絡が未だとれず、予定トランスポゾンを揃えることに難航している。このため、所有研究室と継続して連絡を試みるが、手に入らなかった場合、少数種だけでも検討することを構想している。また、年次計画1年目の「IDGF4がカースト分化に与える影響の検討」を継続して行うとともに、分泌性タンパク質の挙動を追跡することを計画している。
|