研究課題/領域番号 |
11J10247
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山辺 弦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ラテンアメリカ文学 / キューバ文学 / 性 / 諧謔 / 文学と政治 / レイナルド・アレナス / ペドロ・ファン・グティエレス / ソエ・バルデス |
研究概要 |
交付申請書に記載の通り、当初三年次に予定されていたプリンストン大学での手稿・書簡の研究は、申請研究の予想以上の進展によって、二年次に当たる本年度の6月28日~9月6日に前倒しして行うことができた。これは東京大学グローバル・スタディーズ・プログラムによる研究費援助を受けたものであるため、奨励費の多くは手稿の分析の際に必要な撮影機器やスキャナ類の購入、および関連図書の購入費として有意義な使用を行うことができた。ここで予想以上に多くの資料を得ることができたため、今年度の旅費は国内での補完的な資料収集や学会等への参加のために活用した。 交付申請書にも明記していた通り、二年次の達成目標には、アレナス、グティエレス、バルデスを主な対象とする本研究を、他のキューバ作家たちにも敷衛する可能性を探ることでより多角的に発展させることが含まれていた。その目標は、アレナスとともにキューバ作家であるカルベー・カセイおよびカルロス・ビクトリアにおける性のテーマについて論じた学術論文「流亡の座標―現代キューバ文学に見る亡命と性」として具体的に達成をみた。さらに、東京で開催された国際学会では、キューバ文学における諧謔の一側面をポーランド人作家ゴンブローヴィッチとの比較において論じた発表を行い、本研究を世界文学的な問題系へと開いていく計画までも一部実現することができた。もちろん、当初の申請内容も着実に進展を見ており、特に2013年刊行予定となった共著では、キューバ革命の実情について整理した論文「カストロ体制とラテンアメリカの作家たち」と、まず核となるアレナスの作品に絞って性と諧謔の問題を追求した論文「レイナルド・アレナスとキューバ革命政権一独裁体制を撹乱する性と笑い」の二点がその成果として公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
9.に示した通り、申請研究は当初の計画を着実に進めているだけでなく、他のキューバ作家への敷術可能性を探った論文を公表したり、三年次の目標として想定されていた世界の他地域の作家との比較を試みるという目標を、国際学会での発表によって実現したりしているため、予定以上の進展と成果を挙げていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特に論文の執筆が主たる作業となるため、執筆に必要な文献の購入費や、各種研究会への参加費、研究協力者への謝金などを有効に使用しながら作業を進めたい。また、本申請研究に対しては、当初の計画のみならずさらなる発展を期するべく、キューバ文学に留まらない様々な地域の作家たちに関する情報を収集し、多角的な成果公表を目指す可能性が出てきた。このため、当初予定されていた国内外の成果発表の場、ならびにキューバ国内やマイアミ大学で予定されていたフィールドワークおよび在外研究の予定は、研究の進展に応じて然るべき変更を加えていく必要が考えられるため、柔軟な対応を行いたい。
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