研究課題
本年度は、個体間の同期作用について、主に脳機能測定を用いた解明と教育支援への展開に取り組んだ。第一に、同期作用の感情面へのアプローチとして、他者の表情を認知する際の脳機能を検討した。成人・小児・自閉症スペクトラム(ASD)児が表情認知をする際の脳機能を、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて計測した。ASD児が表情認知をする際に、特定の脳領域の活動が亢進することに加え、亢進の程度と障害の重症度が関連することを明らかにした。第二に、ASD児に対して継続的な教育的介入を行い、介入に伴う脳機能の変化を検討した。介入によって、対象となったASD児は行動面での改善を示した。また、介入前後において脳機能でも改善傾向を示した。教育的介入に伴う脳機能の変化を明らかにするとともに、脳機能を一つの指標として、介入の有効性を検証することが出来る可能性を示した。第三に、人と人の間に生じる同期作用が発達的に変化する可能性をふまえて、発達における母子間の相互作用を検証した。出産直後から産後約7年6ヶ月にわたるコホート調査に基づいて、相互作用に関わる要因を検討した。その結果、多動や不注意といった子どもの行動特性が母親の精神健康に与える影響や、母親の養育態度が子どもの行動特性に与える影響を明らかにした。これら三点の成果より、同期作用の解明が進むとともに、教育支援の有効性が示唆されたと考えられる。また、外部研究機関との連携の構築もすすみ、次年度以降の研究を進展させられるものと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定していた研究計画を遂行出来ており、次年度の準備も適切に整っていると考えられるため。また外部機関との連携も円滑に進んでいるため。
当初の研究計画に沿って研究を遂行する予定である。来年度は、本年度実施した教育支援の展開と検証を継続して行うとともに、新規の認知課題を実施し、個体間の同期作用について脳機能面から検討することを計画している。また、外部研究機関との連携も継続し、研究を推進する予定である。
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