研究課題/領域番号 |
11J10361
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉沢 隆浩 信州大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | アドレノメデュリン / RAMP / ミトコンドリア / 心臓 / 心筋細胞 |
研究概要 |
アドレノメデュリン(AM)は全身の臓器で産生され、血圧調整や臓器保護など生体にとって重要な作用が多く知られている。我々はこれまでに、AMホモノックアウトマウス(AM-/-)が心血管系の異常により胎生致死となる事を報告している。AM受容体CLRの受容体活性や受容体特異性はRAMPという膜タンパクが結合することで規定される。RAMPには3つのサブアイソフォームが知られているが、我々はその中でRAMP2ホモノックアウトマウス(RAMP2-/-)のみがAM-/-同様に心血管系の異常により胎生致死になる事を報告した。AM及びRAMP2は心臓でも発現を認めるが、その解析は胎生致死のために困難であった。 H23年度は、薬剤誘導型心筋細胞特異的RAMP2 KO(C-RAMP2-/-)を樹立し、従来胎生致死となるために不可能であった成体での解析を可能とし、表現型の解析を行った。C-RAMP2-/-では、心エコー検査から拡張型心筋症様所見の自然発症を認めた。また、病理解析では、C-RAMP2-/-で心筋細胞肥大や心線維化の亢進、酸化ストレスの増大が認められた。電子顕微鏡像からは、心筋原線維の走行異常やミトコンドリアの構造異常がC-RAMP2-/-で認められた。次に、C-RAMP2-/-における遺伝子発現を、RTリアルタイムPCRを用いて検討したところ、心不全関連遺伝子や心リモデリング関連遺伝子の有意な発現変動を認めた。さらに、ミトコンドリア関連遺伝子の発現変動や、脂質メタボローム解析からミトコンドリア特異的脂質の含有量低下が、心不全発症に先行して認められた。さらに、培養心筋細胞を用いた検討からも、RAMP2欠損によりミトコンドリア機能低下が認められた。 以上の結果から、AM-RAMP2系は心筋細胞でのミトコンドリア機能調節に重要な役割を果し、心臓の機能及び恒常性の維持に重要である事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
C-RAMP2-/-の樹立を行い、順調に解析ができている。心不全や心線維化などの表現型の解析が予定通り進行しているだけでなく、従来一般的には言われていなかったAM-RAMP2系と心臓ミトコンドリア機能の関連性など、新規の発見もできた。この事から、心不全の発症メカニズムなど、より深い解析に繋げられる可能性があり、今後のさらなる発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は主としてC-RAMP2-/-の表現型の解析を行い、ミトコンドリアの異常等の発見をした。平成24年度は、さらにミトコンドリア異常から心不全へ繋がるメカニズムや、AM-RAMP2系によるミトコンドリア機能維持機構について明らかにするために、治療実験やシグナル経路についての検討を行う。また、AM-RAMP2系によるミトコンドリア機能維持作用が心不全治療に有用かについても、心不全モデル動物を用いて検討する。
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