研究課題/領域番号 |
11J10396
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
笠原 勇矢 群馬大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 核酸アプタマー / ランダムスクリーニング / キャピラリー電気泳動 / 分子認識 |
研究概要 |
種々の標的分子に対応できる一般性の高い人工核酸アプタマーのスクリーニング・システムの構築を目指して、これまで得られた知見を基に、CE-SELEXによるトロンビンを標的分子としたアプタマーの創出を、天然型のライブラリA、5'側プライマー領域に架橋型核酸(BNA/LNA)を導入したライブラリB、ライブラリBに加え、チミジンの5位にN-6-アミノエチルアデニンを修飾したライブラリCの3種類を用いて行った。その結果、各ライブラリから90%以上のヒット率で標的分子に対して結合活性を持ったアプタマーを得ることができた。 また、配列解析を行ったところ、ライブラリAとBからは同じような配列が多く得られたため、BNA/LNAを導入しても得られる配列に影響が少ないことが分かった。さらにそれらは、グアニン四重鎖構造を形成するような配列であった。しかし、ライブラリCからは、Gの含有率が比較的低く、グアニン四重鎖構造を形成しないような配列が得られた。 非平衡キャピラリー電気泳動法(NECEEM)により、それぞれのアプタマーの標的分子に対する解離定数(Kd)を算出した。その結果、ライブラリA>B>Cの順で値が低くなったことから、修飾基を導入したことによりKdが向上したことが分かった。 続いて、ライブラリCより得られたApt#C1について、トロンビンに対する結合活性における修飾基の効果の検証を行った。その結果、いずれの修飾基を天然型に戻した場合でも、結合活性を失うことから、Apt#C1においては全ての修飾が標的分子との結合活性に必須であることが示唆される。 次に、得られたアプタマーのヒト血清中での安定性の評価を行った。その結果、半減期が天然型アプタマーでは2.4時間、人工核酸アプタマーでは10.9時間と約4.3倍向上していることが分かった。 また、加齢性黄斑変性症の標的分子に対しても同様に天然型のライブラリを用いてスクリーニングを行ったところ、10%のヒット率で標的分子に対して結合活性を持ったアプタマーを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CE-SELEXにおける、標的分子と複合体を形成しているものと遊離のものとの分離条件を最適化することにより、高いヒット率で標的分子に対して結合活性を持ったアプタマーを得ることができた。また、修飾基を導入することにより、得られるアプタマーにどのような影響があるのかを確認できた。さらに、実用化に向けてヒト血清中での安定性の評価も行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
人工核酸ライブラリを用いたスクリーニングを引き続き行い、ライブラリの種類とHit率の相関などについて考察する。さらに、ヌクレアーゼ耐性や血清中における安定性に関する測定結果も踏まえ、ライブラリを改良し、新たにスクリーニングを行う。これら一連の過程を繰り返すことにより、用いた標的分子に対して有効な人工核酸アプタマーを効率的に取得するための指針が得られると期待される。改良を重ねることよって、治療薬として高い有効性が見込まれる人工核酸アプタマーを取得する。さらに、共同研究先に赴いて申請者自らがそれらのin vivo評価を行う予定である。得られた結果を総括することによって、NECEEMによる複合体の分離からアプタマーの単離および機能評価までの一連の流れを総合的に検証し、システムのさらなる効率化によるコスト低減や迅速化を図る。
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