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2011 年度 実績報告書

チタニアコーティングによる各種チタン合金の高生体活性化とそのメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 11J10401
研究機関名古屋大学

研究代表者

山本 大  名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワードチタン合金 / 陽極酸化 / 骨伝導性 / チタニア / 動物埋植試験 / 親水性 / 表面粗さ
研究概要

本年度は,陽極酸化によってβ型Ti合金のTi-29Nb-13Ta-4.6Zr(TNTZ)およびTi-13Cr-1Fe-3Al(TCFA)の骨伝導性を向上させることを念頭に,まず骨伝導性の向上に有効な平滑表面を維持しつつ,アナターゼ(anatase)皮膜を成膜する条件を検討した.TCFAでは平滑なanatase皮膜を成膜することができなかったが,TNTZでは,0.1M H_2SO_4水溶液中で,印加電圧が150Vの時に表面の平滑なanatase皮膜を成膜することができた.しかし,その骨伝導性は高くなく,同様のanatase皮膜をTi表面に成膜した場合とは異なる傾向を示した.その原因を調べるために,皮膜の親水性を評価したところ,水滴接触角は60(deg.)程度を示し,Ti表面に作製したanatase皮膜の骨伝導性に関する先行研究で示された,骨の生成しにくい表面における水滴接触角と一致することが分かった.そこでNb,Ta,Zrの単体金属,ならびに各合金元素とTiとの2成分系合金を用いて,TNTZ表面に成膜したanatase皮膜の親水性におよぼす合金成分の影響を検討したところ,TNTZ合金中に多く含まれるNbの酸化物が,TNTZの陽極酸化皮膜の親水性を低下させることが示唆された.以上を総括すると,平滑表面を有する場合,合金においても親水性が骨伝導性に強く影響することが明らかとなり,今後は親水性を軸とした表面設計を検討する必要性が示唆された.
また,表面平滑化とは逆行するものの,純Tiにおいて骨伝導性の向上に効果のあることが確認された高濃度(>3M)H_3PO_4水溶液中でのスパーク陽極酸化をTNTZ,TCFAにも試みた.いずれの合金においても,多量のPO^<3->_4を含有するanatase皮膜が生成し,TCFAの骨伝導性はTiと同様に大きく向上するものの,TNTZの骨伝導性はわずかに向上するのみであった.このとき,TNTZ表面には合金成分が存在し,TCFA表面には合金成分はほとんど存在しないことまで分かっているが,その影響については現在研究を進めている段階である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでは材料が骨伝導性を発現するメカニズムが明らかではなく,どのような表面が骨伝導性を示すかが不明確であったが,表面粗さや親水性が骨伝導性に強く影響することが明らかとなり,今後の表面設計の指針が見出せたため.

今後の研究の推進方策

●これまでとは異なる試みとして,陽極酸化以外の方法で,TNTZおよびTCFA合金表面を親水化するための表面処理法を検討する.具体的には,水熱処理,プラズマ照射,紫外線照射を用いた親水化を検討している.
●本年度に引き続き,TCFA合金の最適な陽極酸化処理法を検討する.特に,TNTZ合金とは異なり,酸化条件によって皮膜表面における膜組成が大きく変化することから,合金成分量の少ない表面を有する酸化皮膜の創製を試みる.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Anodic Oxide Coatings on Titanium Alloys and their Osteoconductivity2012

    • 著者名/発表者名
      Dai Yamamoto, Kensuke Kuroda, Ryoichi Ichino, Masazumi Okido
    • 雑誌名

      Materials Science Forum

      巻: 706-709 ページ: 612-616

    • DOI

      10.4028/www.scientific.net/MSF.706-709.612

  • [雑誌論文] Formation of Amorphous TiO_2 Film on Ti Using Anodizing in Concentrated H_3PO_4 Aqueous Solution and its Osteoconductivity2012

    • 著者名/発表者名
      Dai Yamamoto, Takanori Iida, Kensuke Kuroda, Ryoichi Ichino, Masazumi Okido, Azusa Seki
    • 雑誌名

      Materials Transactions

      巻: 53 ページ: 508-512

    • DOI

      10.2320/matertrans.M2011234

    • 査読あり
  • [雑誌論文] チタン表面やのミクロレベルの表面粗さを制御した陽極酸化皮膜の作製と骨伝導性2012

    • 著者名/発表者名
      山本大, 河合一輝, 黒田健介, 市野良一, 興戸正純, 関あずさ
    • 雑誌名

      日本金属学会誌

      巻: 706-709 ページ: 612-616

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Osteoconductivity of Anodized Titanium with Controlled Micron-Level Surface Roughness2011

    • 著者名/発表者名
      Dai Yamamoto, Ikki Kawai, Kensuke Kuroda, Ryoichi Ichino, Masazumi Okido, Azusa Seki
    • 雑誌名

      Materials Transactions

      巻: 52 ページ: 1650-1654

    • DOI

      10.2320/matertrans.M2011049

    • 査読あり
  • [学会発表] 生体材料用Ti合金TNTZの骨伝導性におよぼす合金成分の影響と表面親・疎水性2012

    • 著者名/発表者名
      山本大, 黒田健介, 市野良一, 興戸正純
    • 学会等名
      日本金属学会2012年春期(第150回)大会
    • 発表場所
      横浜国立大学(神奈川県)
    • 年月日
      2012-03-29
  • [学会発表] 親・疎水性の異なるチタンの陽極酸化皮膜の骨伝導性2012

    • 著者名/発表者名
      山本大, 有井一志, 黒田健介, 市野良一, 興戸正純
    • 学会等名
      表面技術協会第125回講演大会
    • 発表場所
      東京都市大学(東京都)
    • 年月日
      2012-03-13
  • [学会発表] β型Ti合金の硫酸水溶液中陽極酸化と骨伝導性2012

    • 著者名/発表者名
      山本大, 魯暁京, 黒田健介, 市野良一, 興戸正純
    • 学会等名
      第25回歯科チタン学会学術講演会
    • 発表場所
      愛知学院大学(愛知県)
    • 年月日
      2012-02-19
  • [学会発表] Formation of Oxide Coatings on Beta-Ti Alloys using Anodizing in Concentrated Phosphoric Acid and their Osteoconductivity2011

    • 著者名/発表者名
      Dai Yamamoto, Kensuke Kuroda, Ryoichi Ichino, Masazumi Okido
    • 学会等名
      2011 International Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science (MHS2011)
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      2011-11-07
  • [学会発表] Ti合金への陽極酸化処理と骨伝導性評価2011

    • 著者名/発表者名
      山本大, 興戸正純
    • 学会等名
      軽金属学会創立60周年記念東海支部特別講演会およびポスター講演会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      2011-10-04
  • [学会発表] 陽極酸化によるチタン表面へのチタニアコーティングとその骨伝導性2011

    • 著者名/発表者名
      山本大, 黒田健介, 市野良一, 興戸正純
    • 学会等名
      腐食防食協会第58回材料と環境討論会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      2011-09-29
  • [学会発表] Anodic Oxide Coatings on Ti Alloys and their Osteoconductivity2011

    • 著者名/発表者名
      D.Yamamoto, K.Kuroda, R.Ichino, M.Okido
    • 学会等名
      Thermec' 2011 International Conference on Processing & Manufacturing of Advanced Materials
    • 発表場所
      Quebec (Canada)
    • 年月日
      2011-08-04
  • [学会発表] 高濃度リン酸水溶液中陽極酸化によるβ型Ti合金上へのチタニアコーティングと骨伝導性2011

    • 著者名/発表者名
      山本大, 黒田健介, 興戸正純, 市野良一, 赤堀俊和, 新家光雄, 上田正人, 池田勝彦, 小柳禎彦
    • 学会等名
      軽金属学会第120回春期大会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県)
    • 年月日
      2011-05-22
  • [備考]

    • URL

      http://f2.numse.nagoya-u.ac.jp/index.html

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公開日: 2013-06-26  

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