研究概要 |
平成23年度は,外国人労働者の数量緩和が企業と地域労働市場に及ぼす影響に関する研究に取り組んだ。この研究では,構造改革の一環として行われた構造改革特区,その中でも特に「外国人研修生受入れ特区」に着目し,特区が受入事業所や地域の労働市場に及ぼした影響を評価した。具体的には,受入れ事業所の生産総額,従業員数,賃金水準,非正規労働者比率の変化等を、認定地域内の非認定事業所や同一産業他地域事業所(全て非認定事業所)との比較によって、制度の効果を検証した。分析にあたり,工業統計調査(1999-2007年)の個票データを名寄せし,特区計画に記載された認定事業所とマッチングすることで,パネルデータを作成した。分析の結果,非正規従業員比率に関して,製造業全体での2000年代を通じた一貫した上昇トレンドとは対照的に,特区認定事業所では,特区認定後に同比率が約4-6%低下していた。多くの認定事業所では,同時期に外国人研修生の受入れを増加させていたことから,日本人非正規従業員が外国人研修生に代替された可能性が推察された。 本研究の第一の意義は,これまで各国の先行研究で実証されてきたように,移民労働者と自国ブルーカラー労働者の代替関係が日本でも存在することを確かめた点である。移民労働者と自国労働者の代替・補完関係の程度の測定は,影響を受ける主体の広さ,政策的関心等の理由から,外国人労働者研究の最重要テーマと位置づけられている。さらに,本研究では,独自に作成したパネルデータを用いたが,日本で,パネルデータによって,移民労働者と自国労働者の代替関係を検証した研究はこれまでなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究目的」に記載した3つの研究課題のうち,平成23年度は,一つ目の課題(上述)に取り組んだ。しかし,残る2つの研究課題については,分析に用いるデータの利用申請手続きに時間がかかり,着手の開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
データ申請手続きを速やかに済ませ,今年度中の可能な限り早い段階で,データを入手し,分析を開始する。入手したデータを精査し,利用可能な変数の不存在や制約が発見された時点で,実証分析の方向性を修正する可能性がある。
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