研究概要 |
細胞外刺激の情報は、細胞内においてシグナル伝達分子の活性化の強さや時間パターンに変換され、下流の遺伝子発現および増殖・分化・アポトーシスなどの表現型を制御します。シグナル伝達経路を構成する分子の時系列データに情報が含まれており、その情報が下流にどのように処理され伝わっていくかを理解すること、すなわち分子ネットワークのシステム特性を理解することで生命システムの本質的な理解に繋がると考えられます。申請者は、シグナル分子の活性や下流の遺伝子発現量を定量的かつハイスループットに取得可能な自動分注ロボットによる定量的イメージサイトメトリーを用いて、シグナル伝達経路の中心的な因子であるERKをはじめとするMAPKs,および転写因子CREBによるIEGs(c-FOS,EGR1,c-IUN,FOSB,JUNB)の時間パターンに基づく発現誘導機構をARXモデルにより解析することを試みました。 23年度はまず、定量的イメージサイトメトリーを用いて、ARXモデルで解析するための実験データを取得した。シグナル伝達経路の中心的な因子であるERKをはじめとするMAPKs,および転写因子CREBによるIEGs(c-FOS,EGR1,c-JUN,FOSB,JUNB)の時間パターンを3分間隔で180分間計測し、計10000点にも及ぶ時系列データを計測することに成功しました。続いて、線形のARXモデルを構築しシミュレーションした。しかしながら、線形のARXモデルでは、実験データを再現することができませんでした。そこで申請者は、生化学反応を模したヒル式を組み合わせた非線形ARXモデルを構築することにしました。結果、ヒル式による非線形ARXモデルは実験データをうまく再現することができました。
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