研究課題/領域番号 |
11J10451
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大井 赤亥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ラスキ / 多元的国家論 / キリスト教 / 労働組合 / ファシズム / 共産主義 / マルクス主義 |
研究概要 |
平成23年度は、修士論文で検討したラスキの初期理論とりわけ多元的国家論の理論構造の分析を進め、ラスキの先行研究の欠落を埋める努力をした。ラスキの多元的国家論についてはこれまで、労働組合への着目による国家の相対化を目指したものという通説が支配的であったが、ラスキの初期著作の綿密な読解を通して、初期ラスキがキリスト教会に関心をむけ、国家とキリスト教の領域区分を眼目としていたことを明らかにした。その成果を論文「初期ハロルド・ラスキの『多元的国家論』をめぐる再検討-教会論と労働組合論の位相」にまとめ、政治思想学会編『政治思想研究(第12号)』(2012年5月刊行)に投稿し、掲載された。同論文は政治思想学会研究奨励賞を受賞した。 同時に、研究対象を徐々に中期ラスキに以降させ、ファシズムや共産主義など1930年代の支配的イデオロギーとラスキの思想変遷の関係についても考察を行った。中期から晩年にかけてのラスキは、ソ連体制やマルクス主義へ接近した「赤い知識人」とされてきたが、同時代の著作やパンフレットに秘められた政治的含意を読解しながら、ラスキによるソ連評価が同時代の社会主義者とは異なり、あくまで個人の道徳的自律や自由権に依拠したものであることを示した。その成果を論文「ラスキにおける『二つの全体主義』認識の変容と自由民主政への批判的省察」にまとめ、日本政治学会編『年報政治学(2012年度第11号)』に投稿し、現在同論文は査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究計画」に照らせば取り扱うべきラスキのテーマ群をそれなりに論文化することができている。しかし複数の投稿論文の作成と、それらを博士論文にまとめる校正作業への時間と集中力に配分に苦慮している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、第二次大戦期ラスキの政治実践、いわゆる「同意革命論」について雑誌『相関社会科学』へ、ラスキの社会民主主義概念について社会思想史学会編『社会思想史研究』へ論文投稿を予定している。その上で、それらを全体的に構成して博士論文の最終的な校正作業に入る。
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