研究課題/領域番号 |
11J10482
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 伸次 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 冥王代 / 大陸地殻 / ジルコン / 包有物 / ジャックヒルズ / LA-ICP-MS |
研究概要 |
冥王代(40億年以前)の初期地球大陸進化を解読するために、西オーストラリア・ジャックヒルズ地域における礫岩サンプルから大量のジルコン鉱物を分離し、京都大学平田研究室のLA-ICP-MSをもちいてジルコンのU-Pb年代測定を行った。ジルコン鉱物の比較・検討の為に、ジルコン年代で38-39億年の数値が報告されているカナダ・アカスタ地域、カナダ・ラブラドル地域、グリーンランド・イスア地域の岩石についても、約2000粒子のジルコン分析を行った。分析の結果、ジャックヒルズ地域の礫岩から40億年以前の年代をもつジルコン粒子を特に多く含む礫岩(最大で約10%のジルコンが40億以上)を判別でき、そのなかから冥王代ジルコンを25粒(最大で約43億年)見出すことができた。また、冥王代の年代を示すジャックヒルズジルコンは、上述の他地域産のジルコンと比べて、以下のような特徴を有することが明らかとなった:(1)系統的にジルコン鉱物の円摩度が高く不定形であることも多い、(2)無色~桃(紫)色を呈する場合が多い、(3)系統的に包有物量が少ない、(4)最大粒径が非常に大きい(300μm以上)。現在、40億年以上の年代を示すジルコン粒子について、レーザーやFIBをもちいてジルコンを切断・加工、そしてEPMAやレーザーラマン分光器をもちいて微小な包有物解析を進めている。 投稿論文としては、ナノ鉱物分析に関連した論文を地学雑誌に1編(Yamamoto et al. 2012)、LA-ICP-MSを用いたジルコンU-Pb年代分析と包有物分析に関する論文をIsland Arcに1編(査読中)提出した。学会発表としては、地球惑星連合大会および日本地質学会において、本研究課題に関するセッションを開催し(代表コンビーナーおよび共同コンビーナー)、大陸地殻進化とジルコン分析の重要性に関する発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジャックヒルズ礫岩に含まれる冥王代ジルコンの頻度は、採取地点あるいはサンプルごとに大きなばらつきがあることが知られているが(数%~10%)、系統的な年代分析から冥王代ジルコンを約10%程度含む礫岩サンプルを選別することができた。また、これまで殆ど論文として記述されていなかった冥王代ジルコン特有の鉱物的特徴(形状・大きさ・色調・包有物量など)を捉えることができた。したがって、今後は効率的に微細な包有物分析を行うことが可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
冥王代ジルコン中に含まれる包有物量は、一般的なジルコン鉱物に比べて、多くはないことが予察的ではあるが明らかとなった一方で、ジルコン粒径は通常の花こう岩に含まれるジルコン粒径と比較して非常に大きいため、その中に含まれる包有物も相対的に大型である。これは包有物分析にとって利点となるが同時に弱点でもある。このため、冥王代ジルコンを効率的に分離・回収することが今後の研究の進展にとって重要である。この点は、上述した他地域産のジルコンとの比較により、冥王代ジルコンに共通して観察される系統的な特徴(色調・大きさ・形状・包有物量など)を手がかりに、今後はより効率的に分離・回収することが可能であると考える。24年度は、これら冥王代ジルコン中の包有物分析について、レーザーラマン分光分析やEPMA、SEM-EDS、そしてATEMを用いた微小領域化学分析を徹底して行なう。
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