研究概要 |
【高密度触覚センサグローブの完成】 手の表側の皮膚全体で詳細な圧力分布計測(片手1052点,二点弁別閾相当)を,手の動きをひどく妨げずに実現できる触覚センサグローブが完成した.コア技術は,厚み0.1mmの柔軟なフレキシブル基板を1mm幅の細帯から成るツリー形状に成形し,この基板の内部に最小2mm間隔で感圧構造を埋め込む,というものである.微細な配線とミクロンスケールの感圧構造を,手の皮膚に沿って設計された形状のフィルム上に一体成形することで,高密度なセンサでありながら容易に実装できる,壊れにくい,曲面に沿わせられる,皮膚の伸縮に追従できる,装着後もごわごわしにくい,といった特長を備えている.被験者の手の指に実際に装着して関節運動の阻害量(関節の屈曲に必要な力の増加量)を評価した結果,従来型の広いシート状のデザインに比べて1/3にまで軽減されることが確認できた. 【手のモーションセンサの開発】 手指の運動計測用に爪に載る程度に小型の姿勢センサモジュールを開発した.各指の各関節にこれを装着するため,指のうごきを妨げにくいフレキシブル基板の通信配線を設計・開発した. 【手の計測・解析】 第一段階として触覚センサのみを用い,性能の確認およびスキル解析手法の検討のため,日常的なタスク(ドライバ等身近な道具の利用,荷物の運搬,マッサージ,粘土細工等)や人工的なタスク(手探りによる物体識別)の計測を行った.途中,感圧感度の不足が判明し,感圧構造の改良と併行して現行のセンサで出来る範囲の計測・解析を進めた.手探りの解析では,触り方のばらつきを触覚データから定量化し,タスクにより異なる手探り方策の違いを数値化できた.また連続したタスク(粘土細工)の計測データに対し,触覚データのクラスタリングによってタスクフェーズをセグメンテーションできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触覚センサについて期待以上に進展し,高度なセンサ性能と実用性が両立できた.これを受け,本プロジェクトでは当初記載した「ロボットへの応用」から,触覚から得られる豊かな情報をどう解析して手のスキルを理解するか,に重心をシフトしてきた.スキル解析についてはまだ初歩的な結果を得た段階であるが,ビューワなどの開発でデータの閲覧性が向上し,計測/解析のサイクルを加速してきた.総じて,概ね順調と判断した.
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