研究課題/領域番号 |
11J10607
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
松井 功 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | バルクナノ結晶メタル / 電解析出法 / Ni / Ni-W合金 / Fe-Ni合金 / A1 / 引張特性 / 延性改善 |
研究概要 |
本研究の目的は、電解析出法により、高強度と高延性を両立するバルクナノ結晶メタルの創製および実用性を具現化することである。 H24年度に得られた結果は以下の通りである。 【電析ナノ結晶メタルにおける強化機構の解明】 バルクナノ結晶Niにおける炭素、硫黄による固溶強化について電析および第一原理計算により検討を行った。30-1600ppmの炭素、140-1200ppmの硫黄を含むバルクナノ結晶Niの作製を行い、微細組織観察および硬さ測定を行った。その結果、粒径12nm近傍で硬さにばらつきが見られた。このばらつきは、Hall-Petchの関係に加えて不純物の影響を考慮することで説明できると考えられた。そこで、第一原理計算よりNi-C、Ni-S二元系合金におけるMisfit Strainを第一原理計算により計算した。さらに、侵入型固溶元素による固溶強化モデルの議論を行った。その結果、電析バルクナノ結晶Niにおける硬さのばらつきが、侵入型炭素の固溶強化に起因していることを明らかにした。 【電析ナノ結晶メタルにおける延性発現機構の解明】 電析バルクナノ結晶Ni-W合金における引張特性評価を通して、電析バルクナノ結晶メタルの延性発現機構について調査を行っている。これまでに、バルクナノ結晶Ni-W合金に最適化した新規Ni-W合金電析浴の開発を行った(SPG浴)。SPG浴を用いて、種々の条件下で作製したバルクナノ結晶Ni-W合金の引張延性は0~13%の範囲で大きく変化した。さらに、この延性が試料の(200)配向度と関連している事が示唆されている。また、粒径やW濃度との間には関連性は見られなかった。現在、バルクナノ結晶Ni-Wに対して、断面TEM観察を行うことで異なる配向性を持つ試料において異なるクラスター構造(数百nmの粒径より大きな組織)が確認されている。今後は、このクラスター構造およびクラスター構造におけるタングステンの存在状態を調査することでナノ結晶メタルの延性発現機構の解明を行っていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、予定していた第一原理計算により算出したMisfit strainを用いて電析バルクナノ結晶Niにおける新たな強化機構の提案に成功している。また、電析バルクナノ結晶Ni-W合金の延性改善にも成功しており、今後、この試料を用いることで、電析バルクナノ結晶メタルの延性発現メカニズムにアプローチしていくことが可能となった。さらに、バルクナノ結晶Fe-Ni合金やバルクナノ結晶Alの作製にも成功している。
|
今後の研究の推進方策 |
バルクナノ結晶Ni-W合金の引張延性が、(200)面の配向性と関連していることが明らかになった。また、異なる配向性を有したバルクナノ結晶Ni-W合金の作製技術も得ている。そこで、今後は、配向性の異なるバルクナノ結晶Ni-w合金の微細組織観察を重点的に行い、電析バルクナノ結晶メタルの延性発現メカニズムの解明を行っていく予定である。
|