研究課題/領域番号 |
11J10647
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今井 祐子 (高柳 祐子) 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 禁裏・仙洞和歌御会 / 御会集 / 中世和歌 / 近世和歌 / 懐紙・短冊 |
研究概要 |
本年度は、主に室町時代~江戸時代の歌会関係資料(御会集及び懐紙・短冊類)を中心に調査を行い、禁裏ならびに仙洞和歌会のデータ(年次、構成員、歌題、内容等)を抽出し、分類・整理を行った。 『私家集大成』(明治書院)、『新編国歌大観』(角川書店)などの公刊資料のほか、国立歴史民俗博物館蔵高松宮家旧蔵本である、『御会和歌』(慶長16年~、204回)、『近代和歌会』(長享2年~、20回)、『禁裏月次御会和歌』(天文4年~、31回)、『禁裏三席御会和歌』(大永5年、1回)、『七夕御会和歌』(貞享4年~、17回)、『聖廟法楽詩歌御会』(寛永8年~、38回)、『百首和歌集成』(永享8年~、44回)、『御会和歌等集成』(明応7年~、20回)、等の御会集を中心に未公刊資料の調査を行った。 また、史料編纂所所蔵写真帳を用い、後土御門天皇、後柏原天皇、後奈良天皇、正親町天皇、後陽成天皇、後水尾天皇、常胤法親王、智仁親王、尊朝親王、中山親綱、今出川晴季らの和歌懐紙、詩懐紙、詠草などの調査を行った。 本年度は、未詳とされていた懐紙・短冊類の詠歌年次のいくつかを明らかにするとともに、従来の和歌史研究において不明な部分が多いとされてきた、当該期の和歌会の実態や運営形態にせまることができた。例えば、正親町天皇代及び後陽成天皇代の和歌会は、従来の想定よりもずっと活発であったことが知られるほか、和歌に熱心であった後水尾天皇は法楽和歌を中心に多様な和歌会を創始したものの、それらは室町時代に起源を持つものに比べてほとんど継続性を持たなかったことなどを指摘することが出来る。こうした中世和歌(室町時代和歌)と近世和歌との連続・不連続のありようが明らかになったことも成果の一つであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、私家集及び私撰集、日記等、主に公刊された資料により歌会のデータ収集を行う予定であったが、それらはおおむね予定通り進展している。さらに、高松宮旧蔵本を中心に未公刊資料の調査にも着手でき、内閣文庫他の所蔵調査を行うことができた。これにより、次年度以降の調査のさらなる充実が期待できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度と同様、歌会データベースのより一層の充実を図る。現在、図書館や博物館、資料館など、多くの施設でwebによる所蔵資料の写真の公開を行っており、現地に赴かなくてもある程度の調査は可能となった。それらを積極的に利用することで、一度の調査にかける時間を短縮し、当初の想定よりも多くの資料にあたることが期待できる。ただし、書誌的な事柄を把握することができないなど、この方法には自ずと限界がある。そうした利点や欠点を十分に念頭に置いた上で、今後は効率的な調査法の模索も行っていく。
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