研究課題/領域番号 |
11J10657
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
歌川 光一 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 新中間層 / 遊芸 / 娘 / 少女 / 楽器 / 趣味 / 女性雑誌 / 校友会雑誌 |
研究概要 |
本研究は、1900年代~1940年代の都市新中間層の「娘」教育における遊芸の位置づけ及びその機能を明らかにすることを目的としている。本申請研究を通じて、遊芸習得が女子の教養としての社会的位置づけを得た背景が明らかとなる。 本年度は、資史料収集を重視しつつ、遊芸の中でも、特に盛んに習得されていた箏、三味線等の楽器を主な考察対象として、適宜、論文執筆、口頭発表を行った。 第一に、本研究の前提となる、19世紀末の「娘」の三味線習得について既述のある新聞記事を整理した。小新聞の分析を通じ、「国家に益なき遊芸」観が支配的だったとされる明治初期において、「娘」の三味線習得は就学を妨げる要因と捉えられつつも、それを駆逐する論理が成熟し得なかった状況を明らかにし、論文として発表した(歌川光一「明治初期小新聞にみる<娘>と三味線-遊芸の近代に関する一考察-」『生涯学習基盤経営研究』第36号、2012年、pp.77-85)。 第二に、1900~1940年代の「娘」の遊芸習得に関する婦人・少女雑誌の記事、及び、附録の絵双六に関する所蔵状況を整理した。初歩的な考察により、将来像の違い(良妻賢母か職業婦人か)、また「娘(、令嬢)」「少女」といった理想像の違いによって、習得が期待される楽器の和洋が異なることが示唆され、口頭発表を行った(歌川光一「戦前期における理想的な娘の教養と遊芸の位置」第63回日本教育社会学会、2011年ほか)。 第三に、旧制高等女学校の校友会雑誌の収集を行った。一例として、跡見女学校において音楽会や卒業式といった学校行事の中で、生徒による遊芸の披露が行われていたことを明らかにし、資料解題として報告書に発表した(歌川光一「高等女学校生と遊芸-1910年代跡見女学校の場合-」『旧制中等諸学校の『校友会誌』にみる学校文化の諸相の研究と史料のデータベース化』(斉藤利彦研究代表、2009-2012年度科学研究費補助金基盤研究(B) 研究成果報告書(第一集)、pp.289-293)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに資史料収集が遂行されている。また、本年度は、考察対象を限定したものの、本研究が対象とする時期の状況を概観することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度収集した資料を用いて、適宜、論文執筆、口頭発表を行う。その際、各々の資史料が持つ意味や、歴史社会学の手法に留意することが肝要だと考えられる。
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