研究課題/領域番号 |
11J10681
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 裕一 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD) (50647039)
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キーワード | 官民協働 / 社会管理 / 安全規制 / 技術基準 / 規制体制 / 政策プロセス / ネットワーク / 制度設計 |
研究概要 |
本研究では、安全等の規制に係る技術基準の策定・運用において、様々な形で「協働」し合う官民アクター(規制行政機関、及び、被規制者もしくは民間事業者等)から構成される規制体制の態様を、理論的・実証的に分析することを目的としている。今年度は、主として、(1)本研究の理論的特徴・新規性の整理、(2)製品の安全等に関する規制の事例研究、(3)事例間の比較研究、という3つの側面から検討を進めた。 第1に、囚虜理論を出発点としつつ、先行研究を再検討した。その結果、「規制空間」における官民関係(各々の内部関係も含む)とその環境の変容、及び、その中での規制機関の裁量行使戦略のあり方が、これまで必ずしも十分には論じられていないことが明らかになった。近年論じられている「ニュー・パブリック・ガバナンス(NPG)」の議論の動向との関係でも、こうした観点で実態を分析することには一定の意義が認められる(これについては、関連する論文集の書評を『国家学会雑誌(第125巻第5・6号)』に発表する)。 第2に、上記の理論的課題を実証的に検討するために、我が国の産業を代表する3製品(自動車・木造建築・電気用品)の規制の事例研究を進めた。例えば、経産省製品安全課を中心に進められている電気用品安全法規制の改革では、自己・第三者認証を含む法規制と業界の自主規制との「協調」が模索されていることが明らかになった(この成果は、『社会技術研究論文集(Vol.8)』、『VCCIだより(103号)』等に発表した)。 第3に、3事例の比較分析と共通要素の抽出を行った。ここで明らかになったのは、3事例にかなり共通して、国際調和化・技術情報の分散化・官民関係の多元化等というように規制空間の構造が変容していること、そして、それによって規制行政機関の裁量行使戦略が変化してきていることである(以上の成果は博士論文としてまとめて東京大学に提出し、平成24年3月に博士〔法学〕号を取得した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、規制空間の構造を捉えるため、できる限り多くの事例を取り上げ、実態調査・分析を行い、規制手法の諸類型を規制行政機関と民間の裁量幅に基づいて類型化することの妥当性も含めて検討することを目的としていたところ、我が国の産業を代表する3製品の規制の事例研究をおおむね予定通り進めることができ、また、その成果により、規制手法の諸類型を裁量幅に基づいて類型化することの妥当性(及び、その限界、それを克服する方法)についても、明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
他の規制領域についても事例研究を進め、より鋭く洗練された、普遍的な理論の構築を進めたい。それを推進するために、(1)現在進行中の制度改正論議、及び、国内外の他政策事例の追加的調査と、本研究への位置付け、(2)官民協働による規制行政の中にある(べき)「独立性」や「自律性」に関する検討、(3)「規制空間」の構造や規制行政機関の裁量行使戦略のあり方を規定する要因(市場の構造等)の分析、といった研究課題に取り組む予定である。
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