研究課題/領域番号 |
11J10712
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
佐々木 崇 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 特別研究員PD
|
キーワード | Staphylococcus / Bacillus / Streptococcus / コアゲノム / COG / KEGG / 共進化 / 哺乳類 |
研究概要 |
ブドウ球菌属が哺乳類宿主と共進化してきたことを裏付けるために、本研究では分子時計による分岐年代推定を行っている。それによって、ブドウ球菌属と哺乳類の出現推定時期一致を示すことを目標としてきた。昨年取得し終えたブドウ球菌属全種全ゲノムの配列情報を基に、ブドウ球菌属のコア遺伝子約1,100個の抽出作業が終わり、現在年代推定の解析を実施中である。また、ブドウ球菌属の進化のベクトルを配列情報から明らかにするために、同じファーミキューテスに属するBacillus属およびStreptococcus,属のコア遺伝子との比較結果を、COGあるいはKEGGデータベースを用いた機能ごとのオルソログクラスタリング解析、dN/dS解析によって実施している。ブドウ球菌が哺乳類宿主の皮膚において、どのような相互作用系を構築してきたのかをゲノミクスから探っている。 昨年度から引き続いて実施してきたブドウ球菌属の生態調査により、哺乳類1,614個体、鳥類196個体、爬虫類89個体の調査が終わった。不明のままであったブドウ球菌42種それぞれの生態学的ニッチの傾向があきらかになってきた。S. aureus-groupと霊長類、S. delphini-groupとローラシア獣類がそれぞれ共進化関係にあることが明らかにはなったが、昨年度の成果以降は新たな知見は得られておらず、概ねデータは収束をみせている。そのため、最終年度はゲノミクスのほうに専念する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブドウ球菌属の生態学的データも充実し、有胎盤類とブドウ球菌属との共進化関係が明確になり、研究計画は順調に推移している。 しかしながら、ブドウ球菌属全種全ゲノム配列を基にortholog解析を実施していたが、方法論で難航していた。ここにきてようやくBLASTベースのbi-directional_best hit(BBH)法を使えるようになり、ブドウ球菌属コア遺伝子の同定、全ゲノム系統樹の完成、そして、種の系統樹構築および年代推定において進展が見られつつある。最終年度に、これらを踏まえたゲノミクスによる解析を完成させたい。
|
今後の研究の推進方策 |
水平伝播やIncomplete_Lineage Sorting(ILS)の影響を受けていない厳密な垂直伝播を遂げてきた遺伝子の選別をし、それらを用いて種の系統樹の構築しなければならない。それがなければ、分子時計による分岐年代推定の厳密な解析はできない。16S,23S rRNA遺伝子の系統樹のtopologyが、ブドウ球菌のニッチ、ゲノム構造の特徴を顕著にクラスタリングしていることがわかった。ゆえに、今後、全てのorthologについて個別に最尤系統樹を構築し、種の系統樹に用いる遺伝子の選定を進めたい。 ブドウ球菌属の生態学的情報解析については、アフリカ獣類のサンプル数が依然として不足しているため、さらなるデータの蓄積を要する。動物園施設を中心に、フィールド調査を続けなければならない。
|