研究課題/領域番号 |
11J10733
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉野 達彦 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | C-H官能基化 / インドール / コバルト / 求核付加反応 / イミン |
研究概要 |
遷移金属触媒を用いた不活性C-H結合の直裁的官能基化反応は、高い原子効率を有し、また合成ルートの単工程化を可能にする可能性を持つ非常に優れた反応である。これまでに数多くの反応が報告されて生きているが、その多くはパラジウム、ロジウムなどの高価な金属触媒を用いる必要性があり、また基質一般性も不十分であるなどの課題を残している。前年度はLewis酸触媒によるベンジル位活性化および他のsp^3 C-H結合の活性化に基づく反応の検討を行ったが、前者はその一般性に限界があり、また後者は反応がうまく進行しなかった。そこで本年度は新規な第一列遷移金属触媒の設計・探索を主な目的とし、まずは配向基存在下、芳香族sp2C-H結合の活性化と続く求電子剤への付加反応を検討した。 近年報告数が急激に増加しているCp*Rh(III)触媒による反応系を参考にし、これまで有機合成における触媒としては全く注目されて来なかった高原子価コバルト触媒に着目した。種々のシクロペンタジエニル型配位子を有する3価のカチオン性コバルト触媒を検討した結果、[Cp*Co(C_6H_6)](PF_6)_2を用いることで、2-フェニルピリジン類のオルト位C-H結合のスルポニルイミンへおよびエノン、α,β-不飽和準アシルピロールへの付加反応が進行した。 さらにより有機合成上有用な反応とすることを目指し、インドールの2位選択的な求電子剤による官能基化反応へと発展させた。インドールはその3位で求電子剤と反応することが知られており、その2位選択的な求電子剤との反応は、分子内反応を除くと非常に困難である。検討の結果、2-ピリミジル基で保護されたインドールを基質として用い、5mol%の[Cp*Co(C_6H_6)](PF6)2、10mo1%の酢酸カリウムを用いる条件にてスルホニルイミンへの付加反応がほぼ完全な2位選択性で進行することを見出した。種々の置換基を有するインドールおよびイミンに対して反応は問題なく進行し、高い一般性を示すことがわかった。また触媒量も最高で0.5mol%まで低減する事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
C-H結合の直裁的官能基化に用いる事のできる第一列遷移金属触媒を新たに見出すことに成功し、さらにそれを用いて合成上有用なインドール2位官能基化反応を達成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在の触媒系を元に、不斉触媒反応へと展開していく。主にキラルなシクロペンタジエニル型配位子を設計し、錯体の合成と反応の検討を行なっていく。しかし比較的キラルな配位子の設計や合成が困難であることも予想されるため、他のタイプの配位子で同様な反応性が得られるような触媒系の探索も視野に入れて研究を進める。同時にsp^3C-H結合の活性化を含めた他の有機合成上有用な反応の検討も行なっていく予定である。
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