研究概要 |
研究の目的は、アルツハイマー病原因ペプチドのアミロイドβ(Aβ)の膜局在・膜挙動を解析して、Aβの毒性機構を探ることである。計画として、1,Aβの局在観察、2,Aβの膜ダイナミクスの2つの観点から研究を行い、それぞれ以下の結果を得られた。 1、相分離膜面におけるAβの選択的局在 細胞膜に見られるドメイン構造(ラフト)をベシクル膜上に再現し、重合度の異なるAβ(オリゴマー、プレ線維、線維)の膜吸着挙動を解析した。脂質には、不飽和脂質DOPC,飽和脂質DPPC,コレステロール(Chol)の3種類を用いた。DOPC/DPPC/Chol=40/40/20,50/50/0の濃度で混合し、無秩序液体相(Ld相)、秩序液体相(Lo相)、固体秩序相(So相)と3種の相状態を制御し、Lo/Ldベシクル(40/40/20)およびSo/Ldベシクル(50/50/0)の2種類を作成した。Lo/Ldベシクルでは、オリゴマーおよびプレ線維AβはLd相にのみ吸着し、線維Aβは膜に吸着しなかった。一方、So/Ldベシクルでは、オリゴマーAβはSo相とLd相の両方に吸着、プレ線維および線維AβはSo相のみに吸着した。つまり、膜の物性がAβと膜ドメインとの相互作用に重要であることを明らかにした。 2、Aβとの相互作用による膜融合ダイナミクス これまでの研究で、明らかにされた膜ダイナミクスに伴うベシクル表面積増加の分子メカニズムを探るため、Aβとの相互作用によるベシクルの膜融合について解析した。蛍光プローブをつけた脂質で作成した小さいベシクル(SUV,直径100nm)がAβ存在時に細胞サイズベシクル(GUV)に取り込まれGUVが蛍光し、AβがGUVとSUVの膜融合を引き起こすことを見出した。またGUV同士の膜融合についても実験を行い、同様にAβがGUV同士の膜融合を誘発することを明らかにした。
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