研究課題
本研究員はLSI半導体プロセスに用いられる絶縁膜の評価および解析を行った。本年度は特に、半導体プロセス特有の微小領域の評価手法の確立を中心に行い、極めて平坦なSi/SiO_2界面より得られる110禁制反射条件下における回折ピーク分裂の観測とその起源の解明を行った。SPring-8の高輝度放射光を用いて、高精度な解析を行う事によりピーク分裂の起源が結晶中の面方位と基板表面の傾きであることが示唆された。また幾何学的な計算によってピーク分裂幅から求められた傾き角は基板の設計値から0.01°程度の精度で一致しており、本手法が表面構造に対して非常に敏感であることを示した。更に、垂直および水平方向歪の分離するための準備段階として、CTR散乱方向への強度変化を観測した。これらの測定により基板オフ角や各構造因子・歪分布を含めた構造モデルを構築し、基板の面内・面直方向に対して歪の方向が逆転していることが明らかになった。しかしながら、歪量の定量評価という観点からはまだまだ定性分析の域を出ておらず、次年度からより詳細なモデル化およびその適用条件を検討していく。計画当初より2~3年次に開始予定だった他材料への評価も部分的にではあるが着手し、次世代メモリ用Al_2O_3膜の評価も行った。本研究では、新規性の高いガスクラスターイオンビーム(GCIB)プロセスを積層メモリ構造に適用することで、メモリ特性の著しい向上が可能であることを示した。特にバンド構造に着目し、X線光電子分光法(XPS)によってエネルギー損失スペクトルを観測することによってバンドギャップエネルギーの変化を捉えることに成功した。また、実験室系XPSとSPring-8の硬X線によるXPS測定を併用することで、深さ方向分析も行った。X線反射率法(XRR)により確認されたGCIB処理層の密度分布を比較検討し、GCIBプロセスによる連続的なバンドギャップエネルギーの減少効果ファウラー=ノルトハイム・トンネル効果の低減に寄与している事を示した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、LSIに用いられる絶縁膜評価のためにそれぞれの作成プロセスに対応した評価技術およびその解析方法を目的としているが、本年度はゲート酸化膜やメモリ用積層プロセスなど異なるプロセスに対して適用可能な評価手法を提案し、次年度からへの下地が完成したと言える。一方で、定量化という観点ではまだ目標まで至っていないため次年度でより詳細な評価に取り組む。
まずは、本年度で明らかになった現象を整理し、定量的な評価に向けてより詳細な解析技術を確立する。研究計画の大きな変更は無く、大まかな測定データは揃っているため、解析技術に重点を置いて研究を進めていく。また、太陽電池用絶縁膜などを中心とした他材料、他分野への評価対象の拡大も同時に行っていく。
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ECS Transaction
巻: 41 ページ: 109-114
10.1149/1.3633026