研究課題/領域番号 |
11J10826
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小嶋 良輔 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 生物発光 / プローブ / 一酸化窒素 / 活性酸素 / 電子移動 / in vivoイメージング |
研究概要 |
昨年度までに、生体内における光機能性分子の励起エネルギー源としての生物発光の利用可能性を確立することに成功していたが、本年は、生体内イベントを可視化する手段としての生物発光イメージングの有用性の拡張を試みた。生物発光を用いたイメージング技術は、生体内においてバックグラウンドとなる物質が殆ど存在しないことから、高感度なシグナル検出を可能とする技術として注目を集めている。中でも、特定の生理活性分子と出会った時のみ発光がONになる生物発光プローブを用いたイメージング手法は、特定の生理活性分子の存在を、in vivoで高感度に可視化可能とする優れた手法である。しかしながら、従来の生物発光プローブが検出できるのは、発光性の基質であるD-luciferinやaminoluciferinをuncageする反応を引き起こすことができるpeptidase活性などに限られるという問題があっため、私はこの解決を試みた。私は蛍光プローブの設計原理として汎用される、電子移動による励起発光中間体のquenching(蛍光分子においてはPeTと呼ばれる)が、その励起過程が異なるのみで生物発光基質でも起き得るのではないかという従来の報告を確実なものとし、この現象(BioLeTと命名)を用いて、生物発光のプロセスにおける励起状態からの発光量子収率を生体分子の有無と同期して精密にコントロールできることを示し、既存のプローブ設計法では開発が困難であった一酸化窒素(NO)検出生物発光プローブを初めて開発することに成功した。本成果は、PeTを蛍光制御原理として開発されてきた蛍光プローブと同様のデザインで、様々な生物発光プローブを開発可能であることを示す画期的成果である。またさらに、目的分子との反応前後で、BioLeTと同時に基質の細胞膜透過性をも制御することで、生物発光プローブのターゲットの検出感度を大幅に向上させることができることも見出し、生きたラット内の好中球から発生するhighly reactive oxygen species (hROS)を、開腹、剃毛することなく超高感度に検出可能な生物発光プローブを開発することにも成功した。本結果は、生物発光プローブの新しいデザイン法を提供するのみならず、in vivoにおけるhROSの役割をさらに解明する上で実用的な研究ツールを提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、励起状態における電子移動と、基質の細胞膜透過性制御という、全く新しい生物発光制御原理に基づく生物発光プローブを複数開発することに成功した。本結果は、生物発光イメージングの可能性を大きく拡張するものであり、画期的成果であるといえる。採用2年目までに達成した、光機能性分子の励起エネルギー減としての生物発光の利用可能性の確立と合わせて、当初の計画以上に研究が進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が、課題最終年度であるが、今後は、本研究で確立された発光制御法を元に、様々な生物発光プローブが開発されることが期待される。また、採用2年目までに確立した、生物発光を光機能性分子の励起エネルギー源として使用する手法を用いることで、今後生体内イベントをコントロールする手法としても生物発光を利用可能になることが期待される。
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