研究概要 |
細胞間の接着力評価の摂動として利用しているフェムト秒レーザー誘起衝撃力をパルスエネルギーの関数として調べ、その制御性を明らかにした。衝撃力の定量評価は原子間力顕微鏡を利用して行った^<[1]>。その結果、衝撃力は発生のしきい値(E_<th>)からその2倍(2 x E_<th>)のエネルギー領域においてほぼ線形的に衝撃力強度が増加し、0.025pN-s以内の精度で制御可能であることを見いだした。我々が行った先行研究^<[2]>等で得た細胞間接着力と比較すると、この制御の精度は接着力のばらつきとよりも小さいものであり、本手法の有効性を示す結果が得られた。フェムト秒レーザーを駆使した本手法は、短時間に多数の細胞を扱える為(神経-マスト細胞の場合、約100samples/hrs)、細胞間のばらつきの影響を軽減して接着力を評価可能であると考えられるが、その実現には衝撃力の制御精度を明確に示すことが不可欠であった。衝撃力の制御精度を明らかにしたことで、神経-マスト細胞間の接着力の評価及び解析の信頼性を格段に向上させられたと考えている。 また、上述の評価研究では、フェムト秒レーザー誘起衝撃力の実体を物理学的に考察し、衝撃力の実体がキャビテーションバブルの生成によって生じる水の体積波であることを示唆する結果を得た。衝撃力の主な起源はフェムト秒レーザー集光後に発生する衝撃波とキャビテーションバブルであると考えられていたが、これらの寄与の実体については明らかになっていなかった。本実験により、フェムト秒レーザー衝撃力を利用したこの新規な方法論を構築する上での根底をなす物理的性質を明らかにできたといえる。このように本年度、衝撃力の物理的性質とその制御性を明確にできたことで、神経-マスト細胞間の接着における物理的相互作用を、より踏み込んで考察することが可能になったと考えている。 [1]T.Iino and Y.Hosokawa, Appl.Phys.Express, 3(2010) [2]Y.Hosokawa, M.Hagiyama, T.Iin6 et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 108(2011)
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