研究課題
本研究の目的は、船体大型ブロック溶接組立時における溶接変形予測システムを開発することである。このシステムの開発により、任意の形状・溶接法および溶接条件の溶接継手を含む、船体ブロック溶接組立時におけるブロック全体に亘る変形が事前に予測できるようになる。この手法は、ブロック建造工程における数百ある船体ブロックすべてを溶接組立し、それらの集合・接合体としての船体が完成するに至る全過程において発生する変形を、溶接工程順に従って予測することができる手法である。このシステムの開発が達成されると、これまで不可能であった、建造時におけるブロック構造全体としての変形を予測することができるようになる。そのため、ここで得られる知見を設計に活用することにより、変形を考慮した設計指針を得ることができるため、構造全体としての変形量を低減する事ができると考えられる。このことにより、建造ドックにおいてブロックを搭載する際の作業ロスを低減することができるため、作業コストの低減のみならず、建造期間の短縮にも繋げることができると考えられ、建造現場に対する波及効果は大きいと考えられる。平成24年度は、上記の目標の内、溶接変形解析手法の一層の高度化を達成するために、前年度において開発されたGPU並列化を導入した理想化陽解法FEMに対して、移動硬化則及び複合硬化則の導入等を行うことで多層溶接時の変形、残留応力の予測に関して拡張を行いった。また、船体ブロック組立時の溶接変形を計測するためのシステムの構築に関して、画像照合法を用いた変形計測システムに関する研究を合わせて実施した。この研究においては、画像照合法に対して、GPUによる並列化、並びに画像拡大法を導入することで、これまで困難であった溶接中におけるひずみ分布の時系列の非接触計測を実現できる可能性を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度は本研究の核となる理想化陽解法FEMによる溶接変形・残留応力解析手法に対して、多層溶接の解析における拡張を行うことで、船体ブロックの溶接組み立て工程の変形予測において基盤となる手法を構築した。また、画像照合法を用いた変形計測手法の拡張を行うことで、船体ブロック組立時の変形を計測する手法に関する基礎的な検討を合わせて行った。以上より、本年度は当初の計画より研究を進めることができたと考えている。
本研究の目的である船体大型ブロック溶接組立時における溶接変形予測を行うためには、溶接変形解析手法の更なる高速化・大規模化が必要である。これを達成するために、本研究で採用している解析手法である理想化陽解法FEMに対して、反復サブストラクチャー法と呼ばれる高速化手法を適用することで、理想化陽解法FEMの一層の高速化を試みる。また、高速化・大規模化と合せて船体ブロック構造をはじめとする薄板構造物に対する理想化陽解法FEMの適用性を向上させるために、代数的マルチグリッド法と呼ばれる手法の導入を検討する。さらに両手法を組み合わせた手法の構築も試みる。
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接学会論文集
巻: Vol.31, No.1 ページ: 23, 32
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Science and Technology of Welding & Joining
巻: Vol.17, No.6 ページ: 511, 517
10.1179/1362171812Y.0000000027