研究課題/領域番号 |
11J10860
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
中島 新 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | CMOSイメージセンサ / マイクロLEDアレイ / 多点電極アレイ / 光遺伝学 / in vitro電気生理 / チャネルロドプシン2 / 神経組織形態観察 / 神経活動光制御 |
研究概要 |
高次な脳活動の情報処理機構を明らかにするためには、機械学習モデル、神経科学の知見、そして計測技術の発展が重要な役割を果たすと考えられている。本研究では脳の情報処理を理解するための一般的枠組みとして、大脳皮質の神経回路モデルである階層時間記憶モデル[1]を支持しており、生物実験によってこのモデルを検証するための方法論を模索・検討している。特に大脳皮質のように微細な神経素子が大規模な集合体を形成している構造物に対しては、光を利用した神経インターフェイスを構築する事が有用であると考えている。本年度の研究実施計画では、こうした光神経インターフェイスを構築する取組みとして、イメージング法や従来手法である電気生理学的手法、また近年注目されている遺伝子工学を用いた光遺伝学を組み合わせた多機能光電子デバイスの作製を目標とした。 具体的にはComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサを使った生体組織の透過光イメージング、多点電極アレイを用いた細胞外電位計測、及び発光素子であるLight Emitting Diode(LED)アレイを用いた多点光刺激の複数の機能をマイクロチップ上に統合し、インターフェイスデバイスの機能評価と生体組織を用いた基礎的な機能検証を行った。試作したデバイスは多点電極アレイのガラス基板の裏面にLEDアレイ一体型CMOSイメージセンサを搭載する構造とした。画像取得及びLEDアレイを用いたパターン光刺激はCMOSセンサ上の駆動回路で制御する。デバイスの機能検証ではイメージングの空間分解能が50μm以上で、神経組織の形態観察が可能である事を明らかにした。また組織切片の任意の細胞層上にマイクロLEDで刺激光を照射する事が出来た。発光パワーは1.3mW以上であり、照射範囲は0.36mm^2であった。これらの成果は神経科学への貢献だけでなく神経補綴デバイス等臨床応用にも発展が期待出来る。[1]D.George, J.Hawkins, PloS Comput. Biol.5, (2009)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した研究目的では、主にマウス大脳皮質の局所回路において、脳表におけるコンタクトイメージング、多点での細胞外電位計測と光制御を可能とするデバイスを提案し、その作製と基礎的な機能評価および生体サンプルを用いた機能実証を目標とした。これまでにCMOSイメージセンサの試作、デバイス実装、イメージング、電位計測、光照射の機能に関しての基礎評価とマウス神経組織切片を用いた機能実証が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果では、イメージング、細胞外電位計測、光神経刺激の3つの機能に関して、神経切片等の生体組織の一部を測定対象とする"in vitro"電気生理実験でのデバイス評価と機能実証を行ってきた。今回の実験ではシート状に調製した組織切片を用いたため、デバイス形状は平面ディッシュ型のものを採用した。今後、神経科学の分野においてより需要の高い測定対象である自由行動下における皮質神経活動の計測と制御を低侵襲で実現するためには、デバイスの形状を工夫し、三次元的な電位計測と光制御が可能となるような実装形態に発展させる必要がある。そのために三次元多点電極アレイや、これに光導波路を組み込んだデバイスの試作を行う予定である。
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