研究概要 |
平成24年度は研究実施計画に基づき、以下の2つの成果を得た。 1.ベンザインと1,3-双極子分子との(3+2)環化付加反応は一挙にベンズアゾール化合物を合成することのできる極めて有用な反応であるが、Diels-Alder反応の時と同様に生成物の位置選択性は低かった。ホウ素置換ベンザインがDeils-Alder反応が高位置選択的に進行することがこれまでの研究で知られていたため、これらの反応ホウ素置換ベンザインを適用することで高位置選択的に多置換ベンズアゾール化合物を得ることができると考え研究を行った。改良を加えたホウ素置換ベンザイン前駆体は反応性の低い基質とも反応することができ、多様な1,3-双極子分子との(3+2)環化付加反応を可能とした。さらに得られた環化付加体のホウ素置換基に変換を行うことで生物活性化合物の位置異性体やトリアゾールアナログの合成も行った。 2.アニリン誘導体は農薬や医薬品原料にも用いられるため、芳香環へのアミンの導入方法は重要な研究課題であった。芳香環ヘアミンを導入する方法としてベンザインへのアミンの求核付加反応が知られているが、アミンの付加する位置を制御することが困難であった。本研究では、ホウ素を保護した1,8-ジアミノナフタレン型のホウ素置換ベンザインに対してアミンを求核付加反応させることで高い選択性でオルト付加体を得ることができた。この結果はホウ素置換基の静電的な作用によってベンザインの三重結合の電荷が偏っているからと考えられる。得られた付加体のジアミノナフタレンは脱保護によって容易に除去でき、続いてカップリング反応等に適用することで多様な多置換アニリン誘導体の合成を行った。今後は溶媒効果やホウ素上の保護基を調節することでメタ選択的な反応へと応用し、両異性体を作り分けることのできる有用な手法となると期待される。
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