研究概要 |
タンパク質変異によって起こる遺伝性疾患として、進行性家族性胆汁うっ滞症2型(PFIC2:Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis type2)がある。PFIC2は生後1年以内に黄疸や胆汁うっ滞といった症状を示し、肝臓移植を施さなければ数年で死に至る重篤な疾患である。PFIC2患者は細胞からの胆汁酸排出を担うBile salts export pump(BSEP)に変異が認められ、そのトランスポーター活性は大きく減弱していることが報告された(Am. J. Physiol. Cell. Physiol., 2007, 293, 1709)。近年、4-PBA(4-phenylbutylate)はBSEP変異体に対し、膜移行促進活性を有していること、これらの変異体は膜上に発現すれば正常に機能することが報告された(Hepathology, 2007, 45, 1506)。しかし、4-PBAはフォールディングや膜輸送に関わるタンパク質に作用していると考えられており、様々なタンパク質のフォールディングに影響を与える(.Physiol. Genomics, 2004, 16, 204)。そのため、特異性が低く、その作用発現にはmMオーダーの高用量を必要とする等、医薬開発上の問題を抱えている。そこで、新たなBSEP変異体のフォールディング・膜輸送異常を特異的に促進・修正する化合物が必要であると考えた。 当研究室ではBSEPと同様に胆汁酸を認識する核内受容体FXR(Farnesoid X Receptor)のリガンド創製が行われており(Bioorg. Med. Chem., 2007, 15, 2587)、これらの化合物は胆汁酸等価体として働いていると考えられる。申請者はBSEPの基質である胆汁酸・胆汁酸等価体にフォールディング促進活性が期待できると考えた。代表的なFXRリガンドであるGW4064を用いて、同様に活性評価を行った。その結果、GW4064も用量依存的に変異型BSEPのトランスポーター機能を修正することが明らかにした。そこで、GW4064をリード化合物として構造展開を行い、更なる高活性化を目指した。スチルベン構造をアミド結合へと変換した化合物をデザインし、合成・活性評価を行った。その結果、これまでに報告されている化合物の中で、最も強い活性を示した化合物の創製に成功した。
|