研究課題
食文化の欧米化や運動不足に伴い、糖尿病は、年々増加の一途をたどっている。現在、我が国の成人の5人に1人、40歳以上では3人に1人が糖尿病とその予備軍をいわれている。これによる死亡率の上昇や、医療費の増大は社会的な問題となっている。近年、魚油に豊富に含まれるオメガ3系多価不飽和脂肪酸が循環器疾患をはじめ糖尿病などに予防効果をもたらすという報告が数多くされ注目されている。しかしながら、その作用メカニズムは未だに不明な点が多い。そこで、本研究では、実験動物を用いてオメガ3系多価不飽和脂肪酸の糖尿病に対する予防効果を検証し、プロテオミクス・ペプチドミクスの手法を用いて、その作用メカニズム解明を目指し研究を進めている。昨年度のオメガ3系多価不飽和脂肪酸による糖尿病予防効果を検証する実験において、22%脂肪含有食を与えたマウスでは、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によって糖尿病を抑制する傾向が見られたものの統計的な有意差は見られなかった。そこで、平成24年度は、糖尿病予防効果を再度検証するために、55%脂肪含有食をマウスに与え、重度な糖尿病を誘導させるモデル系を試した。その結果、オメガ3系多価不飽和脂肪酸による明確な糖尿病抑制作用を確認することに成功した。次にこれらのマウスを解剖して、血清、肝臓、脂肪組織を採取し、肝臓の一部をホルマリン固定して、残りの肝臓、脂肪組織、血清を凍結保存した。ホルマリン固定した肝臓をHE染色して、組織学的評価を行い、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によって脂肪肝も抑えていることが明らかになった。さらに、プロテオーム・ペプチドーム解析するための前処理条件と質量分析の測定条件の検討を終え、大規模なプロテオーム・ペプチドーム解析が行える状態が整えられた。現在、この条件のもと凍結保存したサンプルの分析を開始している。
3: やや遅れている
オメガ3系多価不飽和脂肪酸による糖尿病予防効果を確認するために、55%脂肪含有食を用いて再検証の実験を行った。そのため、計画より若干の遅れが生じた。しかし、明確なオメガ3系多価不飽和脂肪酸による糖尿病予防効果が確認され、今後のプロテオーム・ペズチドーム解析による糖尿病予防効果の作用機序解明に最適なサンプルを採取することができている。
平成24年度に作製した糖尿病を発症したマウスとオメガ3系多価不飽和脂肪酸で糖尿病を抑制されたマウスの肝臓、脂肪組織血清のプロテオーム・ペプチドーム解析を行い、オメガ3系多価不飽和脂肪酸によって発現変動するタンパク質を探索する。そのタンパク質に対してタンパク質データベースならびに文献情報をもとに機能、相互作用する分子、病態との関連性を調べ、オメガ3系多価不飽和脂肪酸による糖尿病抑制作用をタンパク質・ペプチドレベルで解明する。
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