研究概要 |
本研究はI型糖尿病モデルマウスを実験対象として,運動が糖尿病時の循環調節機能に与える影響を検討する.特に血管内皮機能に着目し,独自の手法を用いて血管機能を明らかにするものである.平成23年度は,マウスを対象としたin vivo血管造影法を用いて血管内皮細胞機能を可視的に評価する実験系の構築を行った,具体的には,麻酔下マウスを呼吸管理し,血圧・心拍数測定のために頚動脈,血管作動薬の静脈内投与のために頸静脈,さらに血管造影剤注入のために右大腿動脈に血管カニュレーションを行った.その後,X線イメージングシステムにてマウスの左下肢を撮影した.血管造影剤を注入し,X線撮影することで連続的な血管造影像を得ることに成功した.大腿動脈の本管から下肢筋群に分岐する数多くの血管(口径60~250μm)を,麻酔下のマウスで観察することが可能であった.血管造影法を用いて骨格筋血管網をin vivoにおいて可視化する手法は,これまでに大動物での報告はなされているが,マウス骨格筋で実現した報告はない. さらに血管内皮細胞機能の評価を行うため,アセチルコリン(ACh,内皮依存性血管拡張薬)およびニトロプルシド(SNP,内皮非依存性血管拡張薬)を静脈内投与して血管造影を行うことで,薬理的な血管拡張応答を評価した.ACh投与では,正常マウスに比べて糖尿病マウスで血管拡張応答が有意に低下していた.一方で,SNPの投与では,両群間に差は見られなかった.これらの結果から,糖尿病マウスでは血管内皮依存性の拡張機能が低下していることが示された.これまでのin vitroの摘出した太い血管を用いた先行研究において報告されている内容に反しないことから,本研究手法の妥当性と,太い血管から細い血管までをin vivoで観察可能であることの有用性が期待された,
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今後の研究の推進方策 |
本年度において構築したマウス血管造影法を用いて,糖尿病モデルマウスの運動トレーニングが,下肢血管内皮細胞機能に与える効果を検討する.また,現在用いているI型糖尿病モデルだけではなく,II型糖尿病モデルマウスの利用も検討する.さらに研究課題2として,新たに構築する自発運動中のマウス呼吸測定システムを用いて,糖尿病が呼吸調節に与える影響,およびそれに対する運動トレーニング効果を明らかにしていく.
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